芥川賞受賞!
本谷有希子ってどんな人?

芸人としても活躍する又吉直樹さんや、作家とは思えないキャラの濃さでマスコミに引っ張りだこの羽田圭介さんらの活躍もあり、ここのところ注目度が上がりっぱなしの「芥川賞」。第154回は滝口悠生さんの「死んでいない者」と本谷有希子さんの「異類婚姻譚」のW受賞となりました。


 

今回注目したいのは36歳で芥川賞受賞を勝ち取った本谷有希子さん。実は彼女はバリバリの演劇界出身。そしてモロモロの強烈エピソードを持つ人物でもあるのです。

1979年生まれの本谷さんは石川県出身。高校卒業後に上京して演劇・舞台関係のスクール、ENBUゼミナールに入学。大人計画主宰・松尾スズキ氏のクラスに在籍中、クラスを見学に来た庵野秀明監督の目に留まり『彼氏彼女の事情』で声優デビューを飾ります。松尾クラスの卒業公演では”仕方なく”舞台の台本を書き、指導員でもあった松尾氏から「演じるより書く方が向いているんじゃないか?」と言われるも、ENBU卒業後は大人計画の『ふくすけ』やヴィレッジプロデュースの『1989』などに女優として参加。

21歳で「劇団、本谷有希子」を旗揚げ
”クセの強い”演出家に

そんな本谷さんが「劇団、本谷有希子」を立ち上げたのは2000年9月…わずか21歳の時でした。この時は”師匠”とも言える松尾スズキ氏の元に出向き、ご本人曰く”無理矢理”推薦文を書いて貰って、旗揚げの諸経費は祖母に無心。「芸術家にパトロンがいるのは普通」と言い切った本谷さんですが、演出家としてもなかなか激しい一面を持っています。

出演者が血尿で寝込んだり、稽古中に心が折れたキャストが電車に飛び込みそうになったり、台本から一切目を上げないダメ出しに女優が泣きながら抗議したりとハードな稽古を展開し、本番中でも芝居の出来が良くないと楽屋に怒鳴り込むという状況から、俳優陣の楽屋へ出禁になったこともあるそう(……演出家なのに)。


 

旗揚げ公演『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2000年高田馬場 プロト・シアター)は評判となり、2004年の第8回公演で再演(青山円形劇場)。2005年には戯曲を小説として再構成したバージョンが講談社から出版され、2007年には吉田大八監督・佐藤江梨子さん主演で映画化もされています。

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の再演で大きな評価を得た本谷さんは、主宰一人が劇団員という特性を活かし、劇団☆新感線の高田聖子さんやナイロン100℃の松永玲子さん、高橋一生さん、りょうさん、小池栄子さんらを起用した舞台を次々と上演。2007年には『遭難、』で鶴屋南北戯曲賞を、2009年には永作博美さん主演、PARCO劇場での上演となった『幸せ最高ありがとうマジで!』で演劇界の芥川賞とも言われる岸田戯曲賞を受賞する活躍ぶり。


 

2005年から2006年までの1年間「オールナイトニッポン」のパーソナリティを務めたことで多くの人に知られるようになり、そのルックスも相まって文学や演劇の世界以外でも活躍の場を広げた本谷さん。プライベートでは詩人で映像作家の御徒町凪氏と2013年に結婚。2015年には一女をもうけています。

本谷さんの舞台作品に出て来るキャラクター(特に女性)の多くは、過剰な自意識を持て余していたり、他者に対して異常な攻撃性を見せたり、自己評価が低すぎて引きこもっていたりとヒトクセもフタクセもある人物たち。観客は「いやいやアリエナイから」と感じつつ、心のどこかで笑顔の奥に闇を抱えた登場人物たちに共感してしまうのです。

残念ながら「劇団、本谷有希子」としての活動は2010年・第15回公演の『甘え』(主演 小池栄子)、2013年『ぬるい毒』(脚本・演出 吉田大八 主演 夏菜・池松壮亮 ※本谷さんは原作提供)で止まり、今は小説に活動の基盤を移している本谷さんですが、芥川賞受賞者発表の席に左右違う柄の靴下で現れ、報道陣にそのことを問われると「まさか受賞できると思っていなかったので、そこら辺にあるものを履いてきました」とコメントする姿に、演出家としての”狙い”もちらりと感じたのでした。



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