2015年もさまざまな劇場で多くのドラマが生まれました。あなたは今年、どんな舞台を観て泣いたり笑ったりしましたか?

2014年Ver.に引き続き、今年も演劇ガイド・上村由紀子が今年観たストレートプレイ作品の中から、特に心に残った5作品を振り返りたいと思います。尚、ご紹介の順番は上演時期順、そして完全なる私見です。どうぞまったりお付き合い下さいませ。

近未来?それともすぐそこの現実?
マーキュリー・ファー

◆『マーキュリー・ファー』(シアタートラム)

作 フィリップ・リドリー 演出 白井晃
出演 高橋一生 瀬戸康史 中村中 水田航生 小柳心 小川ゲン 半海一晃 千葉雅子

英国の劇作家、フィリップ・リドリーが2005年に書き下ろした本作。兄弟が不気味な”パーティー”の準備をするうちに、さまざまな真実が浮かび上がり、人間関係が動いていく様子がビビッドに描かれます。

仮想の世界なのか、近未来なのか……それともこの世界で近いうちに起こりうる出来事なのか。シアタートラムという小劇場を客席や通路も含めて自在に使い切り、舞台を”観ている”というよりは事件を”目撃している”感覚が強度の緊迫感と共に常に頭にあった作品。高橋一生さんの繊細で緻密な芝居が特に響きました。

閉ざされた空間で暴かれる”過去”
正しい教室

◆『正しい教室』(パルコ劇場他)

作・演出 蓬莱竜太
出演 井上芳雄 鈴木砂羽 前田亜季 高橋努 岩瀬亮 有川マコト 小島聖/近藤正臣

とある地方都市の祝日、小学校の教室。久しぶりに同窓会が開かれ、教師の菊池をはじめ、元クラスメイトたちが続々と集まってくる。かつてのマドンナ、かつての番長、かつてのガリ勉……そして招待されていないかつての「暴力教師」。彼が突然現れたことがきっかけとなり、同級生たちの過去が次々に暴かれ……。

”ミュージカル界のプリンス”井上芳雄さんが「モダンスイマーズ」の蓬莱竜太氏に書き下ろしと演出を依頼し実現した本作。教室という閉ざされた空間の中で登場人物たちの思いもかけない顔が少しずつ明らかになっていきます。

緊張感と笑いのバランスが素晴らしく、今年ガイドが観た全舞台の中で1番笑った台詞が、元暴力教師・寺井を演じる近藤正臣さんの「お前、アパッチか!?」でした。

ただ純粋なだけでなく、心に闇を抱えた教師を演じる井上さんと、朝ドラ『あさが来た』の粋で温和な舅とは真逆の人間像を演じた近藤さんの芝居が光る一作です。

シェイスピアの「問題劇」
トロイラスとクレシダ

◆『トロイラスとクレシダ』(世田谷パブリックシアター他)

作 ウィリアム・シェイクスピア 演出 鵜山仁
出演 浦井健治 ソニン 岡本健一 渡辺徹 今井朋彦 横田栄司 鵜澤秀行 斎藤志郎 高橋克明 櫻井章喜 石橋徹郎 鍛治直人 松岡依都美 荘田由紀 吉野実紗 木津誠之 神野崇 内藤裕志 宮澤和之 廣田高志 若松泰弘 植田真介 浅野雅博 小林勝也 吉田栄作 江守徹

数あるシェイクスピア作品の中でも上演回数が少なく「問題作」と言われることもある『トロイラスとクレシダ』。トロイ戦争の勃発から7年、未だ戦いを続けるトロイ軍とギリシャ軍の間に起こる悲劇と若い二人の恋愛模様が描かれます。

浦井健治さん、ソニンさんの瑞々しさに加え”芸達者軍団”文学座からも魅力的な俳優が多数出演。江守徹さんの重厚さ、今井朋彦さんの巧みさ、そして横田栄司さんのぶっ飛んだ演技が作品に深みを与え、鵜山仁氏の鮮やかな演出が難しく退屈なものとも捉えられがちなシェイクスピア作品を現代に通ずる物語としてしっかり成立させていました。

◆関連記事
浦井健治×ソニン『トロイラスとクレシダ』観劇レポ!
演劇cafe voi.15 横田栄司さんインタビュー!

残る二作と2015年の総括は次のページで!