固定資産税などの課税ミスについては ≪固定資産税の誤課税はなくならない!?≫ でもご紹介したとおり、総務省の調査では全国の97%にのぼる市町村で問題が生じています。横浜市で一度に千件近くの課税ミスが発覚した事例もありました。
それだけの課税ミス件数があれば、そのなかには誤った課税がされている間に売買されたり、不動産業者が買い取ったりした物件もいくつかあったはずですが、その取引に関与した不動産業者は課税ミスに気付かないものなのでしょうか。
消費者からみれば不動産業者のチェック機能に期待したいところでしょうが、一般的に仲介のときは固定資産税などについて売主と買主の負担金額を日割り計算するだけであり、不動産業者に当事者意識はなく、もし課税ミスがあったとしても不動産業者に何ら影響はありません。
物件を買い取ったときなどには不動産業者も当事者となりますが、固定資産税などは物件を転売するまでの単発的な費用であり、取引全体からみればわずかな金額にすぎないため、やはりそれほど細かくチェックすることはないのです。
もし、隣り合った同じような物件をほぼ同時期に売買し、それぞれの固定資産税額などが不自然に異なっていれば、何かがおかしいと気付く不動産業者もいるでしょう。
また、固定資産税額が飛び抜けて高いなど極端な間違いがあれば、不動産業者が気付く機会もそれなりにありそうです。
しかし、そのようなケースに遭遇することは極めて稀であり、取引の時期が少しずれれば、過去に取り扱った近隣物件の資料と比較して確認するようなこともありません。
さらに、市町村が課税ミスをするときは周辺一帯で何らかの間違いをしているケースもあり、偶然に近隣の物件を取り扱っても、それぞれの比較では発覚しづらいことになりそうです。
固定資産税などの税金についてかなり詳しく敏感な不動産業者だったとしても、市町村が発行する納税通知書などに疑いを持ち、間違いがないかどうかを常にチェックするような担当者は滅多にいないでしょう。
そうすると消費者自身が税額をチェックしたり、税理士など第三者に頼んで確認してもらったりするしか課税ミスを発見する方法はないことになってしまいますが……。
不動産業者のチェック機能に期待するよりも、行政側に一切の課税ミスを起こさないような体制を確立してもらうことが先決ですね。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2008年1月公開の「不動産百考 vol.19」をもとに再構成したものです)