演歌・歌謡曲/現代によみがえる新・歌謡曲

2015年の音楽シーン動向と新・歌謡曲の息吹

昨年に引き続き、業界主導のアイドル音楽が市場を席捲した2015年。このまま往年の"歌謡曲"のような普遍的な情緒をもった音楽は絶滅してしまうのだろうか?答えは「否」。演歌・歌謡曲ガイド・中将タカノリが今後の歌謡曲復権に力をふるってくれそうなホープ・アーティストを紹介する。

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド

オリコンランキングに見る2015年の音楽シーン動向

12月23日、オリコンから2015年の各種音楽ランキングが発表された。

それによると年間で最も売上を記録したアーティストは

以下、AKB48三代目 J Soul BrothersKis-My-Ft2関ジャニ∞と続く。
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上位がジャニーズとAKB系、EXILE系に占められているという点ではシングルランキングも同じようなもので、たまに割り込んでくるのは2PMなどの韓流アーティストのみ。

昨年とほとんど変わらない状況で、2015年は業界主導のコマーシャリズム音楽があらためて市場を席巻した一年と言えるだろう。

確立されきったシステムの中に心を震わせるドラマがないとは思わないが、年間で十指に挙げられるようなヒット曲を、個々のアーティストを支持するごく一部の人しか知らないというのはいかがなものか。

少なくとも昔のように無名の歌手が歌う名曲がじわじわと有線で大衆の支持を集め大ヒットに至るというような時代ではないということだ。

僕がここAll Aboutで紹介している"歌謡曲"という普遍的で幅広い層の感性にうったえ得る音楽は、しばらくは大きな復権をとげることはないだろう。

しかし、このような逆境にあっても今後なんらかのアクションを起こしてくれるであろうホープは確実に存在する。

現代ヒット音楽に物足りなさを覚えている皆さんが求めているであろうサムシングをこの場を借りて紹介しよう。

チャラン・ポ・ランタン

ザ・ワイルドワンズ加瀬邦彦さんが才能を愛したアコーディオニスト・小春さんと、妹でコケティッシュな歌声が魅力のももさんによるユニット。

シャンソンを現代的に解釈したような内省的で簡明な歌詞と、独特の旋律が非常に心地いい。
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2015年1月には『この先のシナリオはあなた次第』がドラマ版『ワカコ酒』(BSジャパン)のオープニング・テーマに採用され注目を集めている。

今はまだ"異色"のイメージにとらわれ大きなヒット曲には恵まれていないが、今後の成長が楽しみな若手アーティストだ。

サカナクション

以前からYMO安全地帯など80年代音楽のオマージュを感じるサウンドが印象的だったサカナクション
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2015年9月にリリースした『新宝島』は出だしから米米CLUB『Shake Hip!』(1987年)のモロパクリのようなフレーズで、しかもPVは『ドリフ大爆笑』(フジテレビ)そのまんまという個人的には大問題な作品だった。

しかし、先達の作品を巧妙に再利用して時代に合ったニューワークを作ろうという発想は歌謡曲そのもの。

僕としては声を大にして賛辞を送りたいアーティストだ。

言語センスと言い、楽曲構成のセンスと言い、才能は大いにある。

あとは知的な若者特有のスノッブを排することに成功すればさらなる境地に至るのではないだろうか。

坂本つとむ with ケンイチ大倉

ベテランロック歌手の坂本つとむさんとジョニー大倉さんの長男で俳優のケンイチ大倉さんによるユニット。
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2014年ごろから頻繁に全国のロックンロールイベントへ出演していたが、楽曲面では次第にムード歌謡色が高まり、2015年12月にリリースしたひとまずの集大成曲『愛の輪舞(ロンド)』はUSEN演歌・歌謡曲部門で12位にチャートインしている。

今後どのような展開を見せるかはわからないが、なぜロックンロールからムード歌謡に向かったのかなど非常に興味を惹かれるユニークな存在だ。


純烈

酒井一圭さんら戦隊ヒーロー俳優を中心に結成された歌謡コーラスグループ。
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2010年のデビュー以来、幅広い層に支持され、2015年9月にはリリースした『今夜はドラマチック』がオリコン週間ランキング26位を記録。

直後に浅草公会堂(約1000名収容)での単独ライブを成功させ、現在進行形で大きな飛躍を見せている。

それぞれの経歴やルックス、ステージング力を総合したメジャー性はそこらの演歌アイドルをゆうに超えていると思う。

あとは、様々な事情があるのかもしれないが、演歌や歌謡曲人脈にとどまらないフレッシュな作家を起用すればより広いファン層を獲得できるのではないだろうか。

新・歌謡曲の時代へ

いかがだっただろうか?

歌謡曲不毛の時代とは言え、懸命にそれを守り育てたり、意図せずもそこにアプローチしてしまうアーティストは後を絶たない。

今後、1960年代や1970年代そのまんまの音楽がヒットチャートを席捲することはまずないだろうが、彼らが存在する限り過去の"歌謡曲"はリスペクトされつづけ、またその理念、概念も消え去ることはないであろう。
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