テクノポップ/アーティストインタヴュー

アーバンギャルドのたのしいプロテスト(2ページ目)

平成二十七年十二月九日、アーバンギャルドが放つ問題作『昭和九十年』! 松永天馬、浜崎容子、瀬々信、おおくぼけい…メンバー全員が一体となって、トラウマテクノポップの枠には収まらない「殺せない言葉」と「ひしめき合うサウンド」が響くコンセプト・アルバムが出来ました。メンバーに登場していていただき、その想いを語ってもらいました。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

ミリタリールックと真っ赤な口紅

ガイド:
オープニングを壮大に飾る「くちびるデモクラシー」のPVでは、皆さんのミリタリールックにどうしても目が行ってしまいます。あれは、トレヴァーさんの作品「i-nazi」をモチーフに再現したようにも見えますが?

くちびるデモクラシー (YouTube)
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「くちびるデモクラシー」のPVより


浜崎:
個人的には「i-nazi」のモチーフというより、「昭和九十年」の絵の女の子のイメージから着想を得ました。あの絵の女の子が大人になった姿が、私というイメージで衣装の制作を考えました。
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「くちびるデモクラシー」のPVより


ガイド:
確かに。リボンも付いていますね!

松永:
『自撮者たち』の装丁画でもある「i-nazi」についてもそうですが、やはり通常版ジャケットとしてトレヴァーが描き下ろしてくれた作品「昭和九十年」のイメージが大きいですね。僕としては「ガスマスク」「少女」というテーマだけで自由に描いてもらったのですが、上がってきたものは想像を凌駕していました。瓦解する国会議事堂、真っ赤な空、まさしく架空の現代、戦時中のいま、こことなっています。
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「くちびるデモクラシー」のPVより


ガイド:
皆さんの真っ赤な口紅も素敵です。「くちびる◯◯」というと化粧品のCMタイアップ曲のように聞こえますが、「貴様と俺とは…」いや「あなたとわたしは…」と歌い出し、戦時中のパラレルワールドに突入する。最近、『たのしいプロパガンダ』というなかなか洞察が鋭い本を読んだのですが、さしずめ「たのしいプロテスト」ではないかと僕は思ってしまいます。ここで言う「たのしい」は「内容がたのしい」というよりも「芸術やメディアのように娯楽となる」と取ってもらうべきですが、いかがでしょうか?

松永:
まさしく。日本では政治はどうも文化とともに語られにくいというか、ミュージシャンやアーティストが政治を題材にすること自体がタブーであるような風潮がありますけど、政治とは本来マツリゴトであって、エンターテインメントと切り離せないと思う。そこで政府主導だけのプロパガンダ・エンタメが幅をきかせようとするなら、僕らだってプロテストをエンタメ化したっていい。ただ、僕らは活動家として何かやりたいわけじゃないし、特定のセクトを支持したいとも思わない。自由でありたいんですよ。セクトに属すれば自由に表現できなくなる。そして、自分たちが自由にものを言えるために「言葉を殺すな」と叫び続ける必要がある。

アーバンギャルドとアーバン・ダンス

ガイド:
この曲は、現4D mode1(元Urban Dance)の成田忍さんもアレンジャーとして加られていますが、これはどのようなきっかけで? 確かにアーバンつながりですが。

浜崎:
成田さんとは、前回の「鬱くしい国」から全面的にタッグを組んでいるサウンドディレクターさんの紹介で、今回の実現となりました。以前からディレクターさんは「いつかアーバンと成田忍を組ませてみたい」と仰って下っていて、「くちびるデモクラシー」を作っている時に「これは成田さんにアレンジをお願いしたい」と私も強く思いまして、相談してみたところ快諾してくださいました。これまでのアーバンギャルドにありそうでなかった攻撃的なサウンドに仕上げてくれて感無量です! またぜひ、ご一緒させていただきたいですね。
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