胸を張って交渉に臨む前田健太
前田選手は球団との会談で、メジャー挑戦への思いを訴えた。
「毎年(大リーグへの)気持ちは強くなりますし、年齢も1歳ずつ年をとっていくので、できれば若いときに行きたいという思いはある。カープで何とか優勝したいという思いも……。いろんな思いもありながら、行きたいという気持ちは消えるというより、強くなる一方だった。後悔のないように行きたい気持ちは伝えたいと思っていた」
海外FA権の取得は早くて2017年。2013年オフの契約更改の席で初めて大リーグ挑戦希望を球団に伝えてから2年が経つ。昨季は11勝を挙げたものの、無冠に終わり、それよりも大事なシーズン終盤に勝ち星を積み上げられなかったことで、球団からポスティングを認めてもらえなかった。
今季は、違う。セ・リーグ最多の15勝の上、2度目の沢村賞、球団最多となる3度目のベストナインにも輝き、胸を張っての交渉だ。
前田が利用しようとしているポスティングシステムをもう一度、ここで説明したい。
現行制度での移籍例は、田中将大のみ
ポスティングシステムとは、海外FA権を取得する前の選手が、MLB球団に移籍できる制度で、2012年に失効状態となり、2013年12月に新制度が締結された。それによると、日本球団が譲渡金(上限2000万ドル=約24億円)を設定し、その額を支払う意思があるすべての米球団が選手と30日間交渉できる。旧制度では譲渡金の上限がなく、交渉は最高入札額を示した1球団に限られた。期間は11月1日から翌年2月1日まで。
現行制度での移籍例は、田中将大(楽天→ヤンキース)のみで、今季はバーネット(ヤクルト)が11月に譲渡金50万ドル(約6000万円)で申請している。
前田サイドも許可が出た場合に備え、準備は万全だ。ダルビッシュ(レンジャーズ)や岩隈(マリナーズからFA)らと同じ大手エージェント会社(ワッサーマン・メディア・グループ)に代理人を依頼し、前田を担当するのはカッツ氏とウォルフ氏の2人と決まった。
ポスティングで手を挙げて、獲得に動く球団もダイヤモンドバックスを始め、ジャイアンツ、レッドソックス、カブス、ドジャース、パドレスなどが考えられる。とくにダイヤモンドバックスはかねてから徹底マークを続けていて、4年から6年の複数年での大型契約を提示してくるのは間違いない。
今後の焦点は、前田と広島との再度の話し合いだが、12月上旬には結論が出る見込み。そうなると、12月6日(日本時間7日)からテネシー州ナッシュビルで行われるウィンター・ミーティングが「前田争奪戦」の舞台になりそうだ。