アドバイス1 今の貯蓄ペースを維持できれば問題なし
まずは今の貯蓄ペースですが、月5万5000円(うち1万円は積立投信)。加えてボーナスで75万円ですから、年間141万円。これを25年間継続すれば、貯められる資金は3525万円(投資は変動がないと仮定)となります。これに現在の貯蓄と投資額の合計1500万円を加えれば、退職金を考慮しなくても5000万円用意できる計算になります。また、相談者のなぎさんは、65歳までは働きたいということですから、収入が下がり、その間は貯蓄できないとしても、毎月の支出額が少ない生活が実践できているため、公的年金が支給されるまでの5年間、この5000万円をさほど取り崩さなくても済むと考えられます。
65歳からは厚生年金に加入していますので、額は不明ですが、仮に毎月生活費が10万円不足したとしても、用意した老後資金で40年以上カバーできます。結果として、老後資金については過度に不安になる必要はないということが言えるでしょう。貯蓄ペースをもっと上げても構わないですが、現状を維持できれば、それで問題ありません。
そもそも家計に無駄はなく、35歳でこれだけ貯めている。その点で今後も心配はいらないでしょう。
アドバイス2 老後資金づくりなら財形年金貯蓄に
貯蓄についてですが、一般財形貯蓄をされています。老後資金づくりに限定するならば、今後は年金財形貯蓄の積立に切り替えてもいいのではないでしょうか。引き出しは60歳以降となりますが、なぎさんのように資金的に余裕があれば、困ることはないはず。利率は決して高いとは言えませんが、一般財形にはない、預入額と利息の合計で550万円まで非課税(貯蓄型の場合)というメリットが活用できます。また、投資については、投資信託を毎月2本、積み立てで買っていますが、国内と先進国のインデックスということでバランスは取れていると思います。ただし、外貨が豪ドルとNZドルに偏っているのがやや気になるところ。金利の高さからでしょうが、リスクヘッジをするなら、米ドルも加えては。
また、投資の大半を個人向け国債となっています。債券でもう少しリターンを狙うなら、一部を社債を変えてもいいでしょう。また、個人向け国債を投資とするなら(安全性が高いため貯蓄に近い)、貯蓄と投資の配分は現在1対2。できれば1対1まで、投資を引き下げたいところです。
さらに、老後資金づくりが目的なら、投資に充てている資金を確定拠出年金に回すという選択肢もあります。税制の優遇が大きいので、それだけでもメリットは十分。もし勤務先でその制度を採り入れていないなら、個人型でもいいので始めてみてもいいでしょう。
アドバイス3 ご両親との同居は家計的に大きなプラス
なるほどと思ったのは、ご両親との同居。お互い賃貸住宅であれば、いっしょに住むことで、家賃が抑えられる、あるいはもっと条件のいい場所に引っ越せるといったメリットがあります。生活費もいろいろシェアすることで、別々に住むよりは生活費を抑えられるはず。ぜひ試してみてください。最後に保険について。
医療保険とがん保険に加入されていますが、これだけ貯蓄があれば、あえて保険に頼らなくても、たとえばある程度の入院なら、かかる医療費は貯蓄と健康保険の高額療養費制度で十分カバーできます。したがって、解約してもいいのではないでしょうか。ただし、がん家系であったり、個人的に心配であれば、がん保険は残してもいいかもしれません。
銀行に勧められた終身保険については、すでに一括で保険料を納めたのですから、老後資金として割り切ればいいでしょう。
相談者「なぎ」さんから寄せられた感想
深野康彦先生にアドバイスを頂けて、大変感激しております。今回、現状維持でいけば心配はいらないという言葉に自信を頂きました。年金財形、確定拠出型年金など耳にしたことはありましたが、改めて調べてみようと思いました。年金受給は先の事だと考えていましたが、今からでもできるんですよね。盲点でした。また投資についても、米ドルの組み入れは少しずつ始めようと思います。保険につきましても長い目で見れば、大きなコストになる、解約するという選択肢にも目からウロコでした。お金の事は、なかなか話しづらく、不安を抱えておりましたが、専門家の方からアドバイスを頂き、現実的に建設的に捉えていこうと思います。このような機会をいただけた事に感謝致します。どうもありがとうございました。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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