工事は順調に進行。完成間近
望月氏の仕事の速さはスゴイ。塗料が乾燥した4メートルの重い板を軽々と上の庭に上げて次々と仕上げたマツ板を張っていきます。使ったネジは、外部用の「コードスレッド」と呼ばれる錆びに強いステンレス製のビス。長さは7.5センチです。このビスを板の中心から上下に7センチの場所に充電式の電動ドライバー(インパクトドライバー)を使って留めていきます。
下の板は5センチの隙間をあけて張ります。ビスを斜めに仮留めして板を載せて水準器で水平を確認しながら板留めします。これはDIYにも応用できそうな技。このとき私は少しお手伝いをしました。おー、戦力外から2軍に昇格か? 作業は4メートル先でビス打ちをしている望月氏から「面(ツラ=柱と板が同一面になっているか)になってますか~?」と聞かれて、板を押さえながら「5ミリくらい出てまーす」と返事をするという「ラクなお仕事」でしたが……。
窓枠と棚板を取り付けて、ついに完成!
窓まわりの仕上げをする段階で「枠の色をどうするか?」ということに。自称・モダニストの私は模型のイメージで「共色の白かな」、となんとなく思っていました。でも私以外は茶系のキシラデコールで仕上げる案を支持している様子。そこで、みーやさんが何か思いついたらしく、「ちょっと待ってて!」と言って物置へ。そしてグリーンの屋外用ステイン塗料を持ってきました。これは外部用ペイントですし、植栽の緑とも合う。みんなの意見が一致して緑色の枠に決定しました。
緑色の屋外用ステイン塗料でペイント。今回はハケで塗りましたがステインは布で刷り込んでもOK。油性のキシラデコールと違い、これは水性ですが耐候性の高さは変わりません。水で希釈できて扱いやすいので屋外でも水性塗料の選択はアリですね。
次に棚受け金物を使ってラックの取り付け。みーやさんからの棚受け金物のリクエストは「くるくるした曲線があるアンティーク調のもの」。そこで知り合いの設計者に相談して、手作りの鍛鉄(たんてつ)製の金物をチョイス。この製品写真をメールでみーやさんに送って確認を取り、私が入手して持参しました。
鍛鉄は昔ながらの手法で、鍛冶屋さんが高温に熱した鉄をトンカチで叩いて仕上げる方法。「鉄は熱いうちに打て」という、ことわざ通りの伝統的な鉄細工で、ヨーロッパなどの街でよく見かける植物を模した有機的なデザインの装飾です。
英語では、鍛鉄を「ロートアイアン」と言います。最近はこうした金物がインテリアでも階段手すりや家具の引手などで人気。インテリア装飾では「アイアン」と略して呼ばれることが多いですね。
知り合いの設計屋さんに教えてもらったケイ・ジー・ワイ工業の、手作りの鍛鉄加工、商品名「鍛冶屋の棚受」。外部使用にも耐えるメッキ仕上げです。4種類のラインナップがありますがチョイスしたのは中くらいの11.5×15センチ(型番:KJ-115BS)。下は現場で棚板の寸法を決めた板取り寸法のメモ。
夕暮れが近づきつつある頃にウッドフェンス完成! みーやさんは、いろいろな人形やかわいい小物を飾ったり金物にランタンを下げたりして、たのしそう。
みんな、予想以上の出来栄えに満足した表情。そしてみーやさんを中心にハイタッチ! 望月氏は「車で来てなきゃ、一杯やりたいすね。泊りにすればよかった」と笑顔。PONちゃんはペイントの仕事がおもしろかったらしく「こんな仕事したいなぁ」と言ってました。
最後に……
近年、難しい工事はプロフェッショナルに任せて、塗装などの比較的ラクな作業は素人が行う今回のような「ハーフビルドDIY」の手法でものづくりをする人たちが増えています。特に、フェンスなどはエクステリア・外構のしつらえなので、台風や大雨などへの対策を施す必要があり、実際、DIYで作った塀が突風で隣家へ倒れこむといった事故もあるそう。そんなリスクを考えてもエクステリア工事ではハーフビルドDIYは有効。
解散した後の帰り際、坂の下方向からの眺め。フェンスの小窓越しに見える灯りが、やさしい雰囲気。意図しなかったのですが、お隣の縦の黒いフェンスと、下部の風抜け部の色とのコントラストがおもしろく格子状のデザインに見えます。これが家、そして周辺の環境も含めた「エクステリア」だと思います。
今回、スタイリングや色に高いセンスをお持ちのイラストレーターさん、高い技量をもち仕事が超速い若い職人さん、こだわりの手づくり感覚を持つ30代の女性、そうした方々と一緒に作業をして、私自身いろいろな気づきを得ました。
そして正直に言うと……、2日で完成するとは思っていませんでしたー!
なにより作業自体が楽しく、みんなが完成をよろこんでくれたことがうれしい。
工事完了後、ハッピーな気分でランタンの灯る、みーや邸を後にしました。
今回のおもしろ登場人物
とやまみーや さんウッドフェンスの依頼者。イラストレーター。日本文芸家クラブ理事、日本出版美術家会員、日本漫画家協会会員。江戸時代の文化にも造詣が深い。アンティークの家具や食器、西洋人形、そして個展を開くほど客船タイタニック号のマニアックで貴重な資料などの収集家で、ホントに、いろいろな知識をお持ちの方。貴重な興味深いお話をたくさん、お聞きしました。
http://omiyaepiqri.web.fc2.com/
望月健人(もちづき・けんと)さん
MKプランニング代表。住宅の外構工事の企画・設計・施工が専門です。静岡県富士市を拠点にしながら関東エリアのお仕事にも対応。木工事を含めたハーフビルドDIYも数多く手掛けています。趣味はバドミントンや海釣り。今回、最年少で筆者との年齢差は、なんと四半世紀!
http://mk-planning-ex.com
PONちゃん
「30代女子代表」としてお手伝いただきました。オリジナルコロッケづくりを研究中。いまは京都で日本伝統文様を勉強していて、みーやさんとすぐ仲良しになりました。ハーブなどの植物にも詳しい。好きな音楽はミスチル。今回の作業を通して「塗る」仕事に興味が沸いてきたそうです。
工事が完了した数週間後、みーや邸に招かれました。右の寝不足のおっさんはウトウト……。それを、おじいちゃんを見守るように心配そうな表情で目配りするやさしい職人・望月氏。PONちゃんは持参したこだわりパンを炭火で焼いてマイペースにモグモグ。今回の現場の関係性を象徴しているような光景をみーやさんがパチリ。みなさん、ありがとうございました! おしまい。
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