文さんと惣兵衛さんが舞台で共演!
新国立劇場『桜の園』
11月11日(水)に、新国立劇場・小劇場(東京・初台)で開幕した『桜の園』。ロシアの劇作家・チェーホフの戯曲を文学座の鵜山仁氏が演出し、実力派の俳優が多数出演しているこの秋の話題の舞台です。主演のラネーフスカヤ夫人を演じるのは前期の朝ドラ『まれ』で文さん役を好演した田中裕子さん、そして物語のキーパーソンとなるロパーヒン役には今期の朝ドラ『あさが来た』で白蛇さんこと惣兵衛を演じる柄本佑さん。”新旧朝ドラ対決!(?)”とも言える本作の観劇レポートを演劇ガイドがお届けします!
『桜の園』(撮影:谷古宇正彦)
【桜の園 あらすじ】
南ロシア。ラネーフスカヤ夫人が有する広大な領地「桜の園」に、彼女とその娘、家庭教師、使用人たちがパリから5年振りに帰って来る。久しぶりの再会を喜び合うラネーフスカヤと地元の名士、使用人らの面々。だが、誰もが胸の奥に”ある思い”を抱えていた。なぜなら長年に渡る夫人の無計画な生活により「桜の園」は借金まみれの破産寸前だったからだ。とうとう競売にかけられることになった「桜の園」。この領地を落札したのは意外な人物だった……。
『桜の園』が初めてロシアで上演されたのは1904年。日本でも大正時代に初演されて以来、多くの演出家や俳優がこの作品に関わってきました。
『桜の園』(撮影:谷古宇正彦)
ラネーフスカヤ夫人役の田中裕子さんはこれまで”享楽的で女王のように振る舞う女主人”といった切り口で演じられることが多かったこの役を”周囲に流されるままに生き、時代についていけなくなった女性”として演じている様に見えました。どこか浮世離れしている感はあるものの、贅沢をし、財産を食いつぶしてしまったというよりは、時代の移り変わりに取り残され、どうしていいのか戸惑っている中年女性という佇まい……ガイドにはそのキャラクター造形がとても新鮮に映りました。
『桜の園』(撮影:谷古宇正彦)
元は「桜の園」の使用人筋で、現在は商人として成り上がったロパーヒン役を演じる柄本佑さん。朝ドラ『あさが来た』では宮崎あおいさん演じる妻のはつにツンデレぶりを炸裂させていましたが、本作ではラネーフスカヤの養女・ワーリャ(奥村佳恵)に恋心を抱いているものの、なかなか想いを伝えらない喪男ぶりをいかんなく発揮。何度も告白やプロポーズのタイミングを逃す姿に思いっきりモヤモヤさせられます。
⇒ 次のページでは物語を読み解く「鍵」について