クラシックの殻を突き破る活躍を見せるアリス=紗良・オット
そして、その隣に座るアリスは4カ月ぶりで話すという日本語で会見。過去に共演を何度かしているフランクフルト放送響の印象は「若い方も経験のある方も混ざっていていろいろな国籍の方もいます。この間のツアーときにすごく印象に残ったのは、マーラーの交響曲第5番で、ソロ・トランペットとホルンがすごくきれいで、すごい印象に残ったのを覚えています。すごくダイナミックな音も出すし、すごく柔らかいニュアンスの細かい音も出せるオーケストラで、ドイツの音楽ももちろんですが、今回私はベルリオーズを楽しみにしているのですけれど、いろいろな音色のあるオーケストラだと思います」とのこと。共演するチャイコフスキーの協奏曲第1番については「この曲を初めて弾いたのが日本の札幌で、10年前なんですけれど、多分一番回数多く弾いている協奏曲です。日本だけで30回くらい弾いていると思います。それで一時距離を置いていて、今回日本で弾くのは5、6年ぶりになると思います。10年間と長い間弾いてきた協奏曲ですけれど、毎回毎回新しいオーケストラや指揮者の方と共演させていただくときに、新しい発見が次々とあり、曲を見る目もこの10年で随分と変わってきました。今回3年前に日本で一緒にさせていただいたフランクフルト放送交響楽団と、今回初めて共演させていただくエストラーダさんと、どんなチャイコフスキーの冒険になるか、とても楽しみにしています」とのこと。
この曲について、更に「あまり自分のレコーディングというのは聴かないのですけれど、このあいだ5年前に共演したレコーディングを聴いてみたのです。今では解釈も全然変わったところも多いのですけれど、同じ解釈のところもあるのですよ。10年間弾いてきて、様々な経験がありました。
17歳のときにキエフでキエフの国立フィルと演奏させていただいたときに、ちょうど日本の大使がいらしていて、次の日、キエフから250km離れているカメンカという小さな村に連れていってくれたのです。そこにチャイコフスキーの妹さんが住んでいた別荘があって、チャイコフスキー自身もそこで「白鳥の湖」とかピアノ協奏曲第2番を作曲したといわれています。今は博物館になっていて、チャイコフスキーが使用していたピアノが2台置いてあるんですよ。そこでピアノに触らせてもらい3楽章の出だしをちょっと弾いたんですけど、それを館長さんが聴いて『実はこれはウクライナ民謡なんだよ』と教えてくれて。当時全然そんなこと知らなくて、その歌を教わって、それ以来3楽章の出だしのテーマを弾くときはいつもその歌を歌っているんですよ。
そういったいろいろな経験があって、曲を見る目も変わっていくのですが、一時、4、5年前くらいに弾きすぎて、特に日本で愛されている曲なので、日本でのツアーになると、どうしてもチャイコフスキーと言われて弾きすぎ、自分の中での解釈の行き止まりみたいなところに来て、一時は距離を置いていました。
ですが、2年前くらいからまた弾くようになって、昔は特別に何か作り上げていこうという姿勢だったんですけれど、今はもうちょっとリラックスして、自分が弾いているのを聴きながら弾いています。一本一本の木は見えても森全体が見えないという言い方があるように、一歩下がると森が見えてくるんですよ。今はもうちょっとそういったやり方で曲に取り組んでいっています。
それとやはり曲のカタチというのは、毎晩毎晩ステージで変わっていくと思うんです。新しいオーケストラ、新しい指揮者で毎回毎回音響も違うし、お客様も違うのでそういった環境に一番相応しい音を作り上げていくっていうのが私たち音楽家の仕事。そういった毎晩毎晩違う環境で同じピアニッシモ、同じフォルテでも変わってくると思い、そういった中で自分の曲の解釈が一番変わっていって成長していくんだと思います。特に今回は4回共演させていただけるのは私にとってすごく嬉しいことで、どんな冒険になるかがすごく楽しみです」とのことでした。
伝統と華やかな歴史を持つオーケストラと、若きマエストロの初お披露目、そして、更に今をときめくソリスト2名との共演。とても注目の来日公演となりそうです。
ところで……、会見中ずっと気になっていたのが、アリスさんが着ていたインナーのシャツ。そもそも上着がライダースジャケットなのもクラシックらしからぬロックな印象で「アリスさん、流石すね」という感じなのですが、その下のインナーは北島三郎さん的なイラストがチラチラと見える……。それで会見後、本人に直接尋ねてみました。
大塚「アリスさん、お久しぶりです。あの、そのシャツなんなんです??」
アリス「お久しぶりです! これ、いいでしょ! 誰だと思います?」
大塚「うぅん? 分からないなぁ……」
アリス「カール、」
大塚「ラガーフェルド!!」
アリス「そう! みんななんか、ヤモリ?だかタモリ?だかって言うんですよ」
大塚「あ、それはタモリね(笑)」
アリス「伊勢丹のメンズで買ったんですよ。レディー・ガガとか他の人のもあったんですけど『やっぱりラガーフェルドでしょ!』と(笑)」
ということで、変わらず楽しいアリスさんでした(笑)。この親しみやすい性格と会見でも明らかな真摯な姿勢。今回もまた魅力的な演奏が聴けそうで注目です。
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五嶋龍がオロスコ=エストラーダ率いるフランクフルト放送交響楽団と2015年8月ヴィースバーデンにおいて共演した際のライヴがCDで登場。
通常盤と特典のついた限定盤があり
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