保健師/保健師の学校について

高知学園短期大学 現場保健師の背中を見ながら学ぶ

保健師になるための学校を個別に紹介します。第20回目は高知県高知市にある、高知学園短期大学専攻科地域看護学専攻です。1年制の専攻科なので、少人数教育で内容の濃い保健師教育を受けることができます。

西内 義雄

執筆者:西内 義雄

保健師ガイド

全員で保健師免許取得を目指す、高知学園短期大学

高知学園短期大学の看護教育は、看護師免許取得を目指す3年制の看護学科と、保健師免許取得を目指す1年制の地域看護学専攻があります。合計すると、4年間で保健師免許を目指すことができるわけです。今回ご紹介する地域看護学専攻は、看護学科とは別に設けられているため、他校、たとえば看護専門学校などで看護師免許のみ取得した人も入学することができます。

高知学園短期大学

高知学園短期大学

学校は高知市内。JR土讃線高知駅から3つ目の旭駅から徒歩7分ほど。看護系以外では、生活科学学科、幼児保育学科、医療衛生学科医療検査専攻、医療衛生学科歯科衛生専攻、専攻科の応用生命科学専攻があり、それぞれ、栄養士、保育士、幼稚園教諭、臨床検査技師、歯科衛生士など、資格取得のための教育に力を入れています。

少人数だからできる、内容の濃い講義と実習

地域看護学専攻の定員は20人。同短大の看護学科からの進学者が18人程度、外部からの受け入れは若干名となっています。資格は保健師の他、学士(看護学)。養護教諭二種免許を持っていれば、同一種免許を取得することができます。
外部からこちらに入ることの利点は、ズバリ、1年という短い時間で資格を目指せることです。同じ目的で大学に編入すると、3年生から始めるケースが多いので、倍の2年はかかります。

1年制での教育の利点は、保健師になるための教育が凝縮されていることです。実習は1か所に1~2人の少人数で出るので、内容の濃い体験をすることができます。できるだけ現場を体験することをモットーとし「現場保健師の背中を見ながら学ぶ」ことも意識しているそうです。また、学生の出身地や親族の有無も考慮し、実習先を選ぶこともよくあるそうで、学生一人ひとりの背景に対する先生たちの配慮も強く感じられます。

実践論でイメージする力を強化

講義で特長的なのは、知識として学んだことを実践に応用できるようにするため、公衆衛生看護実践論という科目を設けていることです。現在は、信州大学が開発したプログラムを用いており、事例や課題を通して実習の前後に学ぶことで、実習現場での多様な実践活動をより理解しやすくしているそうです。

もう少し詳しく説明すると、母子保健、成人保健といった分野ごとに設定された事例について出された課題をグループワークで意見交換しながらまとめ、教員に提出。教員の確認の後、その方法でクリアできる場合は次の課題に進み、できなければ再度やり直しというもので、法的な根拠を示す課題も出るようです。

駐在保健婦の魂も伝承

高知県の学校ならではの保健師教育も見逃せません。キーワードは「駐在保健婦(師)」で、保健師が登場する映画の話でご紹介したように、高知県では駐在制という地域に密着した保健活動を長年展開してきた実績があります。

今回お話を聞いた中のひとり、森本美佐子准教授は駐在保健婦経験者なので、保健師活動の歴史をふまえて地域に密着したリアルな現場の話を聞くことができます。もうひとりの大西昭子講師も市町村保健師の経験があり、地域に根ざした保健師活動について学ぶことができるはずです。

卒業生たちが学生生活をふりかえった時、よく、『ここは自分がすごく問われるところ』『自分が人間として成長できたように感じる』と語るそうです。それについて、先生たちからは「たとえばグループワークをする時、人数が多いと黙っていても済みますが、少ないと自分が何かをしなければ前に進むことができません。やり過ごすことができない環境ですので、自然と1年ですごく伸びるんです」との説明がありました。

先生からの熱いメッセージ

「保健師も看護師も根は一緒なんです。病院の中だけでなく、人々が生きていることの大元を知ること。今の自分の殻から出て、外を見ることが大事なんです。学位をとるための論文の作成も同時進行するので、1年間、とても忙しくて大変ですが、一緒に力をつけていきましょう」(池田恵美子教授)

左から森本美佐子准教授、池田恵美子教授、大西昭子講師

左から森本美佐子准教授、池田恵美子教授、大西昭子講師

「保健師というのは地域を知り、住民を知り、住民に(自分を)知ってもらうことが大切です。学生たちは『住民の方々の心に寄り添う保健師になりたい』との話をよくします。そのためにはまず、相手と話をすること。話の内容をしっかりつかみ、施策に反映させることが大切です。そういうことのできる保健師になって欲しいし、育てたいと思っています」(森本美佐子准教授)

「今、市町村の保健師は忙しくて、地域に出る機会も減っていることが、私自身、とても残念なんです。現場の保健師さんからもそういった声をたくさん聞きます。やっぱり保健師というのは、地域に出て、人と人や資源をつなぐこと、つながること。声にならない声、埋もれてしまっている人をすくいあげていくように活動してほしいと思っています」(大西昭子講師)

(学校データ)
高知学園短期大学専攻科地域看護学専攻:池田恵美子教授/森本美佐子准教授/大西昭子講師
定員:20人
入学資格:大学、短期大学、看護専門学校3年課程における看護師免許取得者もしくは、保健師助産師看護師法第21条各号のいずれかに該当する者

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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