低層の一戸建て住宅が立ち並ぶところではあまり考えられないことでしょうが、繁華街など商業エリアに隣接する住宅地では、すぐ近くで居酒屋や小料理屋、スナック、バーなどが営業していることも少なくありません。
マンションそのものが商業エリアのなかに建てられていれば、その回りがお店だらけというケースもあるでしょう。
そのこと自体は別に悪いことばかりでもなく、賑やかなところを好む人であればそれはそれで構わないわけですが……。
数年前の夏、ある郊外都市の友人のマンションに泊まったときのことです。
昼間の蒸し暑さは和らぎ、窓を全開にして心地よい風を感じながら夜11時過ぎに就寝したのですが(泊めてもらったのがエアコンの付いていない部屋でした)、深夜0時を過ぎたあたりから2軒隣の小料理屋でカラオケが始まって目が覚めたのです。
そのお店も窓を開けているのか、音が漏れてくるといった程度のものではなく、かなりの音量で、客の音程のズレもはっきりとわかるほどでした。
さすがにいつまでも続かないだろうとしばらく我慢していたところ、カラオケ自体は30分あまりで終わりましたが、その後は酔客同士による大声での会話がしばらく続き、さらに1時頃を過ぎて店を出た客が、今度は路上で立ち話状態になったようでした。
だいたい酔っ払い同士が路上で立ち話を始めれば、罵声や嬌声、叫び声が入り混じったり、ときどき喧嘩のように怒鳴りあったりすることも多いわけですが、うんざりとしながら悶々とした時間を過ごしたのです。
こちらは窓を閉めれば蒸し暑くて眠れないし、窓を開ければうるさくて眠れないし……。
ようやく静かになったのは、たしか2時半過ぎのことでした。「草木も眠る丑三つ時」とは縁遠い一夜だったのですが、問題なのはその小料理屋が、騒がしい酔客などとは無縁な様子でひっそりと佇む店構えだったことです。
それが深夜0時過ぎに豹変したわけで、もしそのマンションを買おうとして現地周辺を念入りに下見したとしても、おおよそ深夜の様子は想像できなかったでしょう。
だからといって「購入物件を検討するときには深夜1時、2時にも下見を」などとはいえませんし、そこまでする人は滅多にいないはずです。
もし「念には念を」と深夜の様子を下見したところで、毎日がそのような状態だというわけでもないでしょうから、なかなか容易に気付くことはできません。
酒を飲ませる店に近い住宅の場合には、全室にエアコンを設置して夏でも窓(防音性能も重要)を閉め切るような自己防衛策しかないのでしょうか?
大人であれば「自分も酔っ払う」という手段もありますが(笑)、お酒を飲めない人や子どもはそれもできません。とくに受験前の子どものいる家庭なら、このような立地を極力避けることが賢明なのでしょう。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2008年3月公開の「不動産百考 vol.21」をもとに再構成したものです)