ルーカス&アルトゥール・ユッセン(ピアノ) モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲集
オランダに生まれ、5歳でピアノを始めたルーカス&アルトゥール・ユッセン。マリア・ジョアン・ピリスを講師役に2008年NHKで放映された「スーパー・ピアノ・レッスン」に生徒として登場したあどけない姿をご記憶の方も多いでしょう。今回ドイツ・グラモフォンのインターナショナル版として、マリナー指揮するアカデミー・オブ・セント・マーティンとの共演でモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲を録音しました。透明感あふれるタッチで息の合った馥郁たる演奏を聴かせてくれます。
■ガイド大塚の感想
流麗ながら、流されず、ぴったりの息でかっちり演奏される様から連想したのは、パスタのアルデンテ。この上でも下でもない、正にここの抜群の美味しい芯のある音色が、天才モーツァルトを、しかも4本の腕で奏でるのだから、その爽やかな心地良さは格別。
ダニエル・オッテンザマー(クラリネット) モーツァルト:クラリネット協奏曲、他
ウィーン・フィル首席をつとめるクラリネット界の俊英のソニー・クラシカル・デビュー盤。父・弟も名クラリネット奏者という音楽的な環境に生まれ、ウィーンの伝統をたっぷりと吸収した名手が満を持して世に問う当ソロ・アルバムは、モーツァルトのクラリネット協奏曲をメインに据え、ベートーヴェン、シューベルト、ランアー、シュトラウスなどの、ウィーンにちなんだ作品ばかりで揃えられています。アルバムの最後には即興によるアンコール曲も収録。
■ガイド大塚の感想
終始、とにかく柔らかでなめらかなクラリネット。モーツァルトの協奏曲は、テンポが小気味良く、クレッシェンドなども思い切りよく、軽すぎずワクワクするモーツァルトらしいバックがまず好感。そこに伸びやかなクラリネットが乗るのだが、2楽章の天上的柔らかさを持ったソロの美しさなど、眩い光を見るよう。それにしてもこれライブ録音だという……。極上すぎる……。
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プレスラー(ピアノ) 『90歳バースデイ・コンサート・イン・パリ』
1955年に結成された名ピアノ三重奏団「ボザール・トリオ」。この創設者であり、解散時までピアニストとして長く活躍していたのが、名手メナヘム・プレスラーです。彼の90歳の誕生日記念コンサートを収録したもので共演は1999年に設立された若き奏者によるエベーヌ四重奏団。今回の共演メンバーを決定する際、彼らの名前が真っ先に挙がったというのですから、真の音楽性を認め合った仲と言えるのではないでしょうか。DVDには、プレガルディエンを迎えたシューベルトの歌曲集や、プレスラーのソロによるショパンも収録。
■ガイド大塚の感想
孫ほどに若く、4人が4人とも立体的で精彩に富む音楽を生み出すエベーヌと高い次元で融合し、その中心にいるのがやはりプレスラー。絶対的存在感がすごい。90歳と全く思えない技術で、若々しくみずみずしい音楽が泉のように湧き続ける。DVDにはエベーヌがプレスラーに贈るドビュッシー弦楽四重奏3楽章の演奏が収められているが、それを全身で深く聴くようなプレスラーの姿が印象的。時代も年齢も超える音楽の素晴らしさを感じる瞬間だ。
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庄司紗矢香(ヴァイオリン)、プレスラー(ピアノ) ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番『雨の歌』、他 ライヴ
世界で活躍する日本を代表するヴァイオリニスト、庄司紗矢香が、「一番共演したい相手」と「一番演奏したい曲」を取り上げた2014年4月の奇跡のライヴ録音。偉大な室内楽の達人、楽壇の至宝ともいえるリビング・レジェンドのメナヘム・プレスラーと共に、世代を超えて奏でる室内楽の神髄。伝説のライヴが遂にCD化されました。庄司はチェコ・フィルと10月来日、プレスラーは11月に来日公演を控えています。
■ガイド大塚の感想
上の演奏の半年後のプレスラーの演奏。宝玉のように一つ一つの音がキラキラと転がり輝くピアノ。そこに限りない安心感と尊敬と共感を持って寄り添い歌う庄司のヴァイオリン。奇を衒うことなど一切ない、ただただ音楽を愛し一音一音を丁寧に弾く、そういった演奏。よく「対話」というが、ここまでお互いの音に寄り添った対話はそうそうないと思う。穏やかな調べに満ち満ちたアルバム。
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