短期的には株価は割高で上昇は期待できない。しかし、長期では?
それではもう一度、花王のバリューチャートと株価の推移を見てみましょう。まず現時点において、バリューチャートと比較して、株価がかなり高い水準になっています。つまり、かなり割高な株価になっている、ということです。
ですから、短期的(数週間~数年)には上昇よりもむしろ下落のリスクが高いと考えられます。どれだけ優良な銘柄でも株価が割高すぎれば下がります。
では、花王のバリューチャートは長期的には右肩上がりで増加していくのでしょうか?すなわち、1株当たり当期純利益は長期的には増加していくのでしょうか?
それを考えるうえで参考になるのが、花王のライバル会社プロクター&ギャンブル(以下、「P&G」といいます。)の売上、当期純利益です。P&Gの2015年6月期の売上高は9兆1500億円(76,279百USD。1ドル120円換算、以下同様)、当期純利益は8440億円(7,036百USD)です!
花王の2015年12月期の業績予想は売上高1兆4700億円、当期純利益は910億円です。P&Gの売上は花王の6.2倍、当期純利益9.3倍です!
しかも、P&Gや花王の商品は日用品ですから、世界の人口が増え、新興国の人々が豊かになるほどに消費量が増えていくことが期待できます。ですから、P&Gや花王が対象とするマーケットは、これからまだまだ拡大していくことが期待できます。
もしも花王が業績を伸ばし、当期純利益をP&Gと同じ水準まで上昇させることができたらどうでしょう?もちろんそれには10年20年という時間が必要でしょう。それでも20年後にバリューが今の9.3倍になれば、株価の大きな上昇が期待できます。今の割高な株価も、将来の成長性を加味すれば、適正もしくは割安といえるかもしれません。ただ、できれば今の株価に飛びつくのではなく、これから訪れるであろう暴落時に恐れず落ち着いて投資するというスタンスが、もっとも大きな利益を生むのではないでしょうか。
大切なのは、「利益が増えるから、株価が上昇する」のであって、その逆の「株価が上昇するから、利益が増える」のではない、ということです。株価チャートは、いわば、影の部分であり、その実体は利益です。だから、株価チャートではなく、バリューチャートを見ることが大切なのです。