104歳の建築家の「惹かれる言葉」
1904年から2012年、104年間の彼の足跡が記されている。輝かしい実績に目を見張るが、何と言っても「104歳」という長寿と、亡くなる直前迄多くの建築デザインを手がけていることには、恐れ入る。
また、正面のビデオでは代表作の「宇宙船:ニテロイ現代美術館」を紹介している。その脇に記した彼の言葉は、官能的な造形感をあらわすニーマイヤーの視点を感じる。
「 私が心惹かれるのは、直線や柔軟性を欠く直線ではない。
ただ自由で官能的な曲線だ。
私は、それを故郷の山々や川の流れ、海の波、
そして愛する女の体に見いだす。
アンシュタインの宇宙も曲線からできているのだ。」
まさに彼の考えを表している”惹かれる言葉”だ。
パンブリーリャ・コンプレックス/Pampulha Complexでの仕事
次のコーナー:パンブリーリャ・コンプレックス/Pampulha Complexでは、彼の初期建築、言わば彼の「原点」である仕事を紹介している。リオデェジャネイロから北へ400kmほどの内陸部パンブリーリャ地域での大規模再開発、1943年頃の仕事である。
一番手前にある「サン・フランシスコ・デ・アシス教会」。この教会建築は、ニーマイヤーの建築でしばしばみられる共同創作の出発点でもある。建築構造家、画家、彫刻家などと共同作業しながら空間を構成する様々な創作部位を彼の柔軟なデザインセンスでまとめている。
リズミカルで方向性をもつ建物は、神聖で象徴的な場というよりは、ポコンポコンと楽しげな音が聞こえてきそうな和らぎの場として存在する。
有機的なカタチと透明な皮膜に覆われ佇む自邸のデザイン
楽しげな曲線が連なる一連の建築群の中でも、思わず吸い込まれる存在の「カノアスの邸宅/Casa das Canoas」。1953年にデザインした彼の自邸がある。自邸は、リオデジャネイロ南部、有数の高級住宅地であるサンコンラード地区の山麓二斜面に埋込まれたように建つ。ブラジルの雄大な自然を愛したニーマイヤーにふさわしい環境・・・具体的に言うと、もともとあった大きな岩をそのまま建築プランに採用する自然環境と一体化した建築を実現している。
1/20という大きめのスケールで作られた自邸の建築模型にグっと近づいてみる。
水平線とガラスによる内部と外部を巧みに接続する開放的な空間。
あのミース・ファン・デル・ローエのファンズワース邸の影響も感じる20世紀モダン建築の一つである。それにしても自然に中に横たえる有機的なカタチと透明な皮膜に覆われ佇む建築は、刺激的だ。
カノアスの邸宅の横には「国連本部ビル」。1952年、フランスの巨匠建築家:ル・コルビジェとニーマイヤーの共同作業による著名な建築である。
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