脳・神経の病気

下垂体腺腫の症状・診断・治療

下垂体腺腫は良性の脳腫瘍の一つで、トルコ鞍という場所に発生します。比較的高齢の方にみられ、男性に多い傾向があります。治療は経過観察、内視鏡手術、放射線治療です。予後良好な疾患ですが、早期発見・早期治療が大切です。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

下垂体腺腫とは

下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)は、脳腫瘍の一種でトルコ鞍(あん)という骨のくぼみに発生する良性腫瘍です。

トルコ鞍

下垂体腺腫はトルコ鞍と呼ばれる骨の小さなくぼみに発生します。


発生する部位のすぐ近くに、視交差という左右の視神経が一緒になる場所があるため視野の欠損が症状となることがあります。

下垂体腺腫の年齢、性差

脳腫瘍のなかでは多い疾患で、比較的高齢者に発生します。男性に多い傾向があります。大きさ1cm以下の小さな腺腫は成人の10%程度にみられ、治療が必要ないものが大部分です。

治療が必要な腺腫は、浸潤性といって増大がみられるもの、ホルモン産生腫瘍、ホルモン非産生腫瘍のいずれかです。

下垂体腺腫の症状

初発症状としては視野の欠損があります。両耳側半盲といって、両側の外側の視野が欠損し見えなくなります。また頭痛、嘔気など脳圧亢進症状もみられます。

ホルモン産生腫瘍の症状として、巨人症、先端巨大症、不妊症、無月経、乳汁分泌、肥満、多毛、動悸、痩せ、不整脈などの症状があります。

ホルモン非産生腫瘍の症状としては、性機能障害、男性不妊、無月経、女性不妊などがあります。

下垂体腺腫の診断

■MRI
脳腫瘍の診断にはMRIが必要です。

MRI

脳MRI画像。トルコ鞍に発生した下垂体腺腫。


■病理
最終的な診断は、切除した腫瘍組織の病理診断(顕微鏡診断)で決定します。

病理

      下垂体腺腫にみられる腫瘍細胞の増殖。


下垂体腺腫の治療法

■経過観察
ほとんどの下垂体腺腫は治療の対象となりません。そのため年1、2回のMRI撮影を行います。

■手術
大きさ1cmを超えている下垂体腺腫、トルコ鞍を超えて発育する腺腫、ホルモン産生腫瘍では、増大すると生命予後に関わるため手術を検討します。通常は内視鏡により下垂体腺腫を切除し、完全に腫瘍細胞を取り除くことができれば治癒となります。腫瘍が残存しても良性腫瘍ですので、慎重に経過観察を行います。

内視鏡

鼻腔から挿入した内視鏡により鼻粘膜を切開し、蝶形骨を経由して腫瘍を切除します。


■放射線治療
下垂体腺腫に対して、いろいろな種類の放射線治療があります。ガンマナイフ、サイバーナイフなどの治療があります。放射線治療の利点は、手術が必要ないこと。通院で治療が可能な場合もあることです。

不利な点は、時として腫瘍の増大を抑えきれないこと。2次発がんの可能性があることです。

下垂体腺腫の予後

下垂体腺腫の予後は良好です。いずれにしても早期発見、早期治療が大切な疾患の一つです。


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