株や投資信託は40歳代男性でようやく100万円超に
おさらいで、男女別に各年代の平均年収と貯蓄残高を見ると、男性では、30歳未満では平均貯蓄残高が191万円で年収分には届いていません。30歳代で616万円に増え、50歳代でようやく1000万円を超えて約1500万円に到達しています。女性は40歳代の奮闘が際立っており、男性同年代と比較しても約160万円の差がついています。こうした貯蓄残高の違いや、男女による特性から、保有している金融商品にも違いが出ています。女性は、どの年代でも預貯金の割合が高く、貯蓄残高が増える40歳代でも、有価証券(株式・株式投資信託)は53万円にとどまっています。同じ40歳代男性は104万円。投資に対するスタンスの違いが出ています。また、女性の場合は、同じ貯蓄性の商品でも、一定の額になると普通預金に残しておかず、定期預金に移し換えているのがわかります。
生命保険は、掛け捨て型は調査から除外されており、終身保険や個人年金保険など貯蓄性のある保険が対象となっており、年代が上がるほど、保有額が増える傾向にあります。やはりここでも40歳代女性は平均200万円を超えており、老後資金のために保険を利用している人が多いということが言えるかもしれません。
預貯金、生命保険の割合が高く、安全志向が高い
上記のデータを、保有資産割合の円グラフで見てみましょう。30歳未満の男子では、定期預金を含む預貯金が全体の87%を占めており、有価証券はわずか4%。30歳代になると有価証券が8%と増えますが、それでも、預貯金が72%と非常に高い割合になっています。
実態としては、生命保険も貯蓄性がある商品であり、その他の対象には「社内預金」も含まれています。そう考えると、有価証券以外は、実際には安全性が高いものがほとんどなので、リスク回避の志向がかなり高い結果だと言えます。もちろん、貯蓄残高が少ないうちは、資産形成の最初の段階として、安全資産の確保が優先になりますが、企業型の確定拠出年金、少額投資制度(NISA)などの利用についても、まだまだ浸透していないのかもしれません。
女性も同じようなことが言えますが、特徴としては、預貯金でも定期性預貯金を積極的に利用している格好となっています。自動積立預金などの利用もあると思いますが、コツコツ貯めたお金は定期預金に預け替える、そんなマメな貯蓄行動が表れています。ただ、男性と同様に、有価証券の保有は30歳未満ではわずか1%。30歳代でも8%となっており、やはりリスク回避の志向が顕著に表れた結果と言えるでしょう。
40歳代、50歳代で有価証券の保有が10%を超える
貯蓄残高が増えてくる40歳代、50歳ではどうでしょうか。40歳代になると預貯金も定期預金の割合が増え、全体の38%と高くなっています。ただ、預貯金全体では68%と依然として高く、有価証券は13%にとどまっています。
30歳代から大きく増えたのが生命保険。金額にして50万円が120万円と大幅増となっています。50歳代になるとさらにこの傾向が強まり、生命保険の割合がさらに高くなります。有価証券は全体の17%と増加してはいますが、平均保有額が254万円にとどまっています。この年代は子どもの教育費がかかる時期でもあります。減らせない教育費は安全資産としてキープしている表れかもしれません。
女性は、さらに安全性、確実性の高い商品へのシフトが進み、40歳代で預貯金が全体の66%。生命保険を入れると、実に87%という結果に。有価証券はわずか5%にとどまっています。この年代は男性よりも貯蓄残高が多く、平均959万円と1000万円近いのですが、有価証券は53万円。
まだまだ老後までには20年と長く、もう少し投資に目を向けてもいいのではないでしょうか。50歳代になると、有価証券の割合は高まりますが、金額にして173万円。全資産の13%です。消費行動ではアクティブな結果となった50歳代女性ですが、金融資産については、守りの意識が強いのかもしれません。
60歳になってから、初めて投資が多い?
最後に60歳以上の男女の保有資産割合を紹介します。この年代はいずれも平均で1000万円以上の貯蓄残高があります。中央値でも男性が920万円、女性が830万円となっています。退職金や生命保険の満期金など一時金として受け取ったものが加味されているため、平均や中央値が上がる結果になっています。しかし、やはり気になるのは、有価証券の割合です。それまで投資商品を保有していなかったのに、そうした一時金を投資商品に回す、初めて投資をするという人が少なからずいます。割合としては、男性で20%を超え、女性でも16~18%と増加しています。
60歳になったからといって、すぐに貯蓄を使い果たしてしまうわけではありません。10年後、20年後も老後資金は必要です。そのために預貯金だけではなく、運用しておくことも考えておくべきです。ただ、それまで投資を経験していない人が、多額の資金をいきなりリスクの高い投資商品を買ってしまうことがないようにしたいものです。60歳からでも長い期間を運用に使えますから、ゆっくりと投資割合を増やすなど、慎重な姿勢で取り組んでほしいものです。
今回、男女別、年代別に金融資産の保有金額、割合を見てきましたが、依然として安全志向が高い結果となっています。昨年の10月、11月調査ですが、まさにそのタイミングで日銀の黒田バーズーカ砲によって日経平均株価は急騰しました。有価証券の金額については、その恩恵が反映しきれていないとは思います。しかし、それでも、もともとの保有割合の低さは相変わらずです。若年層は貯蓄総額を増やすことを優先すべきですが、昨今は毎月1000円程度から投資信託を積み立て購入でき、確定拠出年金やNISAなど税の優遇が受けられる制度もあります。若いうちから少しずつでも投資にチャレンジしてもいいのではないでしょうか。
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