安静臥床(あんせいがしょう)が心身に及ぼす影響とは?
安静臥床中に現れる腰痛は、日常生活への復帰を困難にする恐れがあります。
また、安静臥床中は年齢や性別、体調に関わらず殆どのケースで「腰痛」を引き起こします。これは、長時間に渡って背中をベッドに押しつけていることが主な原因です。通常、なめらかなS字カーブを描く背骨(脊柱)が、平らなベッド面に密着すると、周辺の筋肉が緊張し血流が滞ります。するとここに「発痛物質」が蓄積され痛みを生じさせます。
安静臥床中のストレスも原因の一つです。テレビや天井を眺めるだけ、外の世界と遮断される生活が続くと、うつや認知症様の状態に陥りやすくなります。
安静臥床中の腰痛が原因で寝たきりに?
「動くと痛む」「これ以上痛くなったら大変だ」などと過剰に腰をかばうことで、さらに筋肉が緊張し痛みが増強されるケースもしばしば見受けられます。特に、もともと体力や回復が弱く、目新しい環境に馴染むのに時間を要する高齢者は要注意です。一度、痛みを理由に安静を優先した生活に落ち着いてしまうと、そこから抜け出すのが困難になってしまう恐れがあります。いざ起きあがろう、トイレに行ってみようとしても思うように手足が動かず、日常生活に介護を必要とする状態で退院日を迎えるケース、或いは心身ともに「寝たきり」の生活になってしまうケースも少なくありません。安静臥床中に行っておきたい腰痛対策
安静臥床中に腰痛を引き起こす最大の原因は、背中の血流低下です。背中の血流低下は、身近なものを使って予防または軽減することができます。■タオルや枕を使った安楽な体位の保持・体位交換
膝の裏に丸めたバスタオルや枕を入れて、両足を軽く曲げた体位をとると、腰への圧迫を和らげ血流低下を防ぎます。膝の裏だけではなく、骨盤の両側や頸の後ろに入れた方が楽と話す人もいますので、どの体位が一番「安楽」か、体調や痛みの様子を見ながら調整すると良いでしょう。また、常に天井を見る体位(仰臥位)だけではなく、数時間おきに横向きに体位を変える(体位交換)のも効果的です。これは、栄養状態の悪い高齢者に発症しやすい「とこずれ(褥瘡)」の予防にも繋がります。
安静臥床後の腰痛は動いて治す?
本人だけではなく、家族の過剰な心配が日常生活への復帰を遅らせてしまうケースもしばしばです。
■体調が良くなったらはやめに座位を取る
安静臥床後、すぐに歩行や階段昇降をはじめるのは危険です。少しずつ、段階的に身体を戻していくようにしましょう。まずは、ベッドに仰向けになった状態から上半身を起こす「長座位」から始めます。起立制定血圧による目眩や動悸がなければ、足を曲げて「椅子座位」に挑戦してみましょう。また、座ったままできる食事や整容なども取り入れます。ただ座っているだけではなく、目や肩に負担の少ない範囲内で「手作業」を取り入れてみるのもお勧めです。手作業は、全身の筋肉や感覚を程よく刺激し、回復を促進させます。
1日でも早く日常生活に復帰するために~本人・家族の負担最小限に抑える~
高齢者の場合、「病院に1週間ほど入院しただけなのに、全く歩けなくなってしまった…」というケースも珍しくありません。「動かさない」ことによって生じる体力・筋力の低下、痛みは、元通りの日常生活に復帰するためのリハビリの阻害因子になります。復帰が遅れればおくれるほど、家族の負担も重くなり、仕事や家事へも影響を及ぼします。スムーズに元の生活に復帰するためには、体調の回復だけではなく、これらの阻害因子を出きる限り予防することが大切です。特に腰痛は、高い頻度で現れます。高齢者の場合は、寝たきりや要介護状態を引き起こす原因にもなり得るため、早い段階から適切な配慮が必要です。