固定資産税などの誤課税問題については以前にも何度か取り上げていますが、少し前には旭川市で36年間、横浜市で32年間にわたり、他人に請求をしたり過大な請求をしたりしていた事例があったほか、横浜市では私道への課税ミスが939件みつかったという報道もありました。
また、横浜市では固定資産税と都市計画税を同姓同名の他人へ請求していたという問題が2008年に発覚しています。この事例でも間違いに気付かないまま35年間にわたり誤課税が続いていたようですから、問題が起きる背景にどれほど分かりづらい制度があるのか、いかにチェック体制が不十分なのか、容易に想像できるのではないでしょうか。
さらに、2014年には埼玉県新座市で、27年間にわたって固定資産税を過大徴収され続けていた高齢夫婦が、それを支払えなくなって家を失ったという深刻な事態も報道されていました。
総務省が2012年8月にまとめた資料によれば、2009年度から2011年度の3年間に、固定資産税や都市計画税に関して何らかの課税ミスがあった市町村は全国の97%に及ぶのだそうです。
誤課税には過大徴収だけでなく、逆に過小だったものも含まれますが、そのうち土地について取り過ぎていたのは68.0%、家屋について取り過ぎていたのは59.5%となっていました。
役所側からすれば何十万件、何百万件といった土地や家屋を取り扱うなかで、いくつかミスが起きることは仕方のない面もあるでしょう。それを認めたうえで、「ミスがあったらすぐにみつけられる」ような仕組みをつくることが大切です。
納税者に対する分かりやすい説明(どの土地・家屋にどのように課税されているのかといった説明)とともに、「課税ミスがあるかもしれない」ということを納税者にしっかりと意識させることも必要でしょう。
だいぶ前のことになりますが、某大手出版社の記者からいきなり電話があり、「不動産の税金について教えて欲しい」とのことでした。その前に複数の税務署や税理士にも電話をしたらしいのですが、どちらも専門用語が混ざった説明でどうもよく理解できずに困っていたとか。
税金を徴収する側が一般人に対してそのような分かりづらい説明をしているようでは、誤課税問題を解決することはなかなかできません。
ところで、上記の同姓同名の被害者に対し、横浜市は誤課税のあった35年間ではなく、課税台帳が残っている11年間分について還付すると報じられていましたが、課税台帳がなくても過去の課税額についてはおおよその推定ができるはずです。
しかし、誤差を見込んでたとえば推定額の9割程度にとどめるとしても、35年間分をきちんと返還するべきではないでしょうか。もちろん利息を付けて……。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2008年4月公開の「不動産百考 vol.22」をもとに再構成したものです)