自社ブランドと他社ブランドで消費者の多様化に対応!
業績が変動するにはいくつかの理由があります。そこで、まずは各社が販売しているブランドや関連会社等をみて、それぞれの会社の特徴を見てみましょう。下記の表は、大手4社の主要販売商品や主な関連会社です。
ビールについて特徴的なことは、会社業績が大手3社と比べて大きく劣っていたサッポロがエビスを販売しているということです。エビスと言えば、元祖プレミアムビールというイメージがありますが、そのエビスを販売しているのは、一番規模の小さいサッポロなのです。規模の小さなサッポロも、北海道内では非常に大きなシェアがあります。北海道内のほとんどの飲食店でサッポロビールがあるほどです。
その他のビールの特徴を見てみましょう。実はオリオンビールは沖縄県外では、アサヒが販売しています。逆に、沖縄県内でのスーパードライはオリオンビールが製造・販売しています。そのため、沖縄で飲むスーパードライは、沖縄県外とは味が違うのです。
また、アサヒは中国の青島ビールにも出資しています。同じように、サントリーは国内でカールスバーグを販売していますし、キリンはバドワイザーやハイネケンを販売しています。つまり、海外ビールを飲んだと思っていても、実は国内ビール会社が儲かっている、ということもあります。
このようにビール各社は、ボリュームゾーンには自社のメインブランドのビールを販売し、その他のゾーンには他社のブランドビールを販売することで消費者の嗜好の多様化に対応しています。
次にウイスキーですが、マッサンで有名なニッカはアサヒです。サントリーは山崎、白州、角、などの有名銘柄を製造販売しています。さらに、2014年にはジムビームで有名なビーム社を約1兆6500億円で買収しました。キリンはフォアローゼズを保有しています。ウイスキーについては、マッサンブームや、ハイボールブームでアサヒやサントリーに勢いがある一方で、キリンは少し元気がないようです。
ワインについても、ウイスキーと同じような印象です。ワイン好きの人はご存知と思いますが、国内ではサントリーが保有する登美の丘ワイナリーが世界的にも有名です。また、サントリーはフランスの第3級シャトーであるシャトー・ラグランジュも保有しています。次に、あまり魅力的なワインのなかったアサヒですが、ワイン事業を強化するために2015年3月に国内のワイン輸入販売会社大手エノテカを買収しています。キリンもメルシャンというワイン事業の会社を保有していますが、サントリーやエノテカと比べると、魅力的な商品が比較的少ないといえます。
次にソフトドリンクですが、大きな特徴はありませんが、実はカルピスはアサヒ、ペプシコーラはサントリー、小岩井乳業はキリンです。商品名だけでは、どの会社の商品なのか、さっぱりわからないですね。
最後に、ビール会社は飲食店も保有しています。ビアガーデンやビアホール等を保有しているのは当然ですが、それ以外にも、例えばアサヒは和食のなだ万を保有しています。サントリーはハーゲンダッツ、ファーストキッチン、サブウェイを保有しています。
以上のように、各社のブランドや関連会社をみると、それぞれの会社の特徴が見えてきます。アサヒは、ビールでしっかり儲けていたが、それ以外はいまひとつだったので、カルピスやエノテカを買収して、勢いをつけてきている。サントリーは、酒類、ソフトドリンク、飲食業等に総合的に投資を行って、総合力で勢いがある。キリンは伝統的によい商品を販売して儲けてきましたが、近年は目新しいものもなく、少し勢いがないのかもしれません。サッポロは大手3社と積極的に勝負はせずに、地域密着を基本として、独自の路線を確実に歩んでいるといえるでしょう。