河川失明症(オンコセルカ症)とは

河川失明症(オンコセルカ症)は日本では馴染みの少ない病気ですが、中央・東西アフリカ、中南米の一部および中東のイエメンに見られます。

原因は蠕虫(ぜんちゅう、体が細長くクネクネして移動する虫のこと)である回旋糸状虫です。英語ではフィラリアと言い、イヌの寄生虫で有名ですが、人にも感染する種類があります。それによって引き起こされるのが河川失明症です。河川失明症の原因糸状虫は小さいので、ミクロフィラリアと呼ばれています。

ブユ

黒バエであるブユで感染します

感染の原因となるのは、流れの速い河川に生息するブユ。成虫になると人の皮膚に寄生し、コブのようなものを作り、痛みが生じます。ミクロフィラリアはブユが感染者を吸血する際にブユの体内に侵入し、2週間後に人に感染できる幼虫に成長します。その幼虫はブユの頭部や口吻に移動し、人を吸血した時に感染します。

人体に侵入した幼虫は主に皮膚、時に筋肉や関節に生息し、3カ月から1年かけて成長します。成虫になると、10~15年も生き続けます。

河川失明症の症状

感染して発症すると、

  • 皮膚のかゆみ
  • 皮膚が盛り上がった状態になる皮下結節
  • 失明などの眼の症状

の3つの主な症状があります。これらの症状は寄生虫のいる場所で起こります。皮膚ではその皮下結節部分の色が変わってしまい、巻きたばこの巻紙やヒョウのような見た目の皮膚になります。さらに、リンパ節も大きくなります。

河川失明症の診断

皮膚の組織を実際に採取して、ミクロフィラリアを直接顕微鏡で確認するか、遺伝子検査を行います。さらに、血液検査でミクロフィラリアに対する抗体の有無を検査します。しかし、抗体検査は現在の感染と過去の感染の区別が難しいために、渡航者などの診断に主に使われます。目の顕微鏡の検査でミクロフィラリアを確認します。

河川失明症の治療

2015年のノーベル医学生理学賞受賞の大村先生が発見・開発された、ミクロフィラリアに効果のあるイベルメクチンと、ミクロフィラリアの成虫の生存に必要なウォルバキアという細菌を殺菌するドキシサイクリンがあります。

  • イベルメクチン
    1回投与するだけで、1年以上の効果があり、ミクロフィラリアをかなり減らすことができます。発症していて症状のある場合は、3ヵ月または6ヵ月ごとに投与します。ただし、ミクロフィラリアの成虫には効果がありません
     
  • ドキシサイクリン
    ミクロフィラリアの成虫に効果があります。ドキシサイクリンを毎日6週間投与することで、成虫の60%以上は死滅します。ただし、ミクロフィラリアには効果がありません

この両方の薬を上手に使っていく必要があります。

河川失明症の予防

この病気はほぼアフリカに見られる病気ですので、渡航時に注意が必要です。有効なワクチンはありません。ブユに刺されないようにすることと河川失明症の流行地域への渡航を避けることになります。やむをえずアフリカに渡航する時には、河川失明症の発生状況に注意し、ジエチルアミドを含む殺虫剤を直接肌に塗ったり、殺虫剤であるペルメトリンで処理した衣服を身に着けたり、長ズボン、長袖にして、ブユに刺されないようにすることと、河川の近くに行かないことです。

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