感染症/百日咳

百日咳の治療法・予防法

百日咳にかかるとつらい咳が続きます。百日咳の治療法と予防法は、主にワクチン。特に小さな子供への感染を防ぐためにも、子供はもちろん、大人への予防接種は大切です。百日咳の治療法と予防法について説明します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

百日咳の治療

百日せき菌に特効薬がありますが、咳のひどい時期での咳には効きません

百日咳菌に特効薬がありますが、咳のひどい時期での咳には効きません

百日咳は細菌によって起こるので、細菌に対する抗生物質を使用し、治療します。百日咳菌に効く抗生物質は限られており、マクロライド系、テトラサイクリン系の抗生物質が中心になります。風邪のような時期に使うと効果的ですが、咳のひどい時期になると効果が期待できません。ただ、感染予防のためには抗菌薬は必要です。

■マクロライド系
エリスロマイシン(商品名:エリスロシンなど) 14日間
クラリスロマシン(商品名:クラリス、クラリシッドなど) 7日間
ロキシスロマシン(商品名:ルリッドなど)
アジスロマイシン(商品名:ジスロマック) 5日間

錠剤と粉の製剤があります。子供用としてドライシロップという甘みのある粉がありますが、それでも後味が悪く苦いかもしれません。特にスポーツ飲料と飲むと苦味が増しますので、要注意です。また、現在は、これらの薬には、ジェネリックの薬がありますが、味と吸収が異なることがあります。

■テトラサイクリン系
テトラサイクリン(商品名:アクロマイシン、レダマイシンなど)
ミノサイクリン(商品名:ミノマイシンなど)
などが使われています。

8歳未満の場合、歯が黄色くなることがあるので、使用は最低限にした方がいいでしょう。セフジトレン(商品名:メイアクトなど)やピペラシリン(商品名:ペントシリン)も効果があります。

咳については、咳を抑える鎮咳薬、痰を出しやすくする去痰薬や気管支拡張薬で少しでも症状を抑えていくことになります。

6カ月未満の乳児が百日咳にかかると、呼吸をしなくなる無呼吸になることが30%見られ、小さいほど無呼吸になりやすくなります。その場合は、酸素を投与したり、人工呼吸器で呼吸を助けることになります。アメリカの報告では6カ月未満の子供の死亡率は0.6%で、全年齢の0.2%より高くなっています。

百日咳の予防法

3種混合ワクチンは、ジフテリア、百日せき、破傷風に対するワクチンです

3種混合ワクチンは、ジフテリア、百日せき、破傷風に対するワクチンです(写真提供:北里研究所)

百日咳の予防で最も有効なのは、ワクチン・予防接種。DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)三種混合ワクチンを行います。現在、日本では、生後3ヶ月から7歳6ヶ月に3回行い、その1年から1年半後に1回行います。11~12歳では、百日咳を除くDT2種混合ワクチンをすることになります。

大人になるにつれて、ワクチンの打った部位が腫れやすくなります。そのため、DT2種混合ワクチンは少量になっています。百日咳は小さな子供に罹ると重症になるので、できるだけ早くワクチンをした方がいいでしょう。

しかし、この百日咳のワクチンの効果は5~10年と言われています。小学校以降の子どもや大人は百日咳に罹っても軽いままのことが多いですが、ワクチンの効果がなくなってくると感染しやすくなります。そのため、家族や集団の中で、学童期以降の子どもや大人が感染源になってしまうことになります。

欧米では10歳以降の子供でも百日咳のワクチンを行っています。欧米の百日咳を含むジフテリアと百日咳の混合ワクチンで、Tdapと呼ばれています。TdapはDPTと同じ成分ですが、DPTからジフテリア毒素の無毒化した成分を減らしたものです。腫れを減らして、成人でも接種可能なワクチンになりました。日本では残念ながら、Tdapはありません。

家族や集団を百日咳から守るためには、欧米のようなワクチンが望まれます。

■参考:「予防接種・ワクチン」

百日咳の登校基準

学校保健法では、百日咳特有の咳が消失するまで出席停止となります。ただし、抗生物質の使用により、感染を起こす可能性が低い場合は、その時点で出席可能になります。

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