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話題作・注目作を10冊セレクト、読書の秋に読みたい本

読書の秋ということで、今回は2015年6月以降に刊行された本の中から、おすすめの10冊をご紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド

注目の作家のあの本

まずは毎年ノーベル文学賞をとるかどうかが話題になるあの人の本、大ベストセラー『火花』とあわせて読んでほしい本をご紹介します。


『村上さんのところ』 村上春樹著(新潮社) 
読者からのメールに対して、村上さんが返信した3716の回答から473の問答を厳選した本。まず「実際のところ、毎年『ノーベル賞がどうの』と騒がれることについていかがお考えなのでしょうか」という問いに「正直なところ、わりに迷惑です」と返すくだりで笑ってしまいました。恋愛から政治までさまざまな悩み相談に率直な言葉で答えてくれます。小説の内容にまつわる質問も楽しい。作家の魅力を再発見できるだけではなく、同時代を生きる人の多様な声に出会えます。



『スクラップ・アンド・ビルド』
 羽田圭介著(文藝春秋)
又吉直樹の『火花』と同時に芥川賞を受賞した作品。無職になった28歳の健斗が「早う迎えにきてほしか」が口癖の祖父と過ごすうちにある計画を思いつく、というストーリーです。将来に閉塞感をおぼえる若者が、恵まれた境遇に見えるのに愚痴ばかりこぼしている老人に対して抱く負の感情が滑稽味のある筆致で描かれています。殺伐とした部分もありますが、祖父という身近な他者の人生を想像してみることによって、健斗は最後に自分の人生を再構築するのです。



『私の恋人』
 上田岳弘著(新潮社)
第28回三島由紀夫賞選考会で、又吉直樹の『火花』と決戦投票の末、受賞を射止めた作品です。10万年前の名もなきクロマニョン人、第二次世界大戦中に強制収容所で死んだユダヤ人のハインリヒ・ケプラー、そして現代の日本で生きる井上由祐。それぞれの記憶を受け継ぐ3人の「私」は、共通して「私の恋人」と呼ばれるひとりの女性を思い描きます。井上由祐の代になって、ようやく「私」は彼女と出会うのですが……。はるか未来にある驚くべきビジョンを提示する風変わりな恋愛小説。ぜひ手にとってみてください。


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