外国人選手が国際大会に出場できる基準とは
過去1勝しかしていなかった日本が南アフリカを倒すという世紀の大番狂わせを演じたが、そのラグビー日本代表チームに、帰化した5名の元外国人選手および5名の外国籍選手がいることが注目されている。
ワールドカップや五輪などの国際試合に、その国の代表選手として出場するには様々な基準がある。
国籍上の条件
まずは世界大会の代表ともいえる五輪についてみてみよう。五輪への参加資格は「五輪憲章」によって定められており、要点をまとめると次のようになる。(1)2つ以上の国籍を持つ選手は自己の判断でどちらの国を選ぶこともできる。
ただし過去に世界大会で1つの国の選手として出場した経験がある場合はもう1つの国の代表にはなれない。
なお、これには例外があり、国籍を変更または新しい国籍を取得した場合は道が開かれる。それを規定したのが次の(2)。
(2)国籍を変更または新しい国籍を取得した場合でも、それから3年後までは2つ目の国の選手として出場はできない。
これにも例外があり、元の国籍の国またはIOC理事会の承認により、3年という期間が短縮または取り消される場合もある。
(詳細はhttp://www.joc.or.jp/olympism/charter/chapter5/45_46.html)
日本人選手の逆の事例
今回のラグビーでは、外国人選手が日本代表となっているケースだが、日本人選手が日本以外の国の代表になった例もある。トリノ五輪(2006年)のフィギュアスケート・ペアで7位に入賞した井上玲奈選手(アメリカ)は上の条件に該当する。女子シングルでリレハンメル五輪(1994年)に日本代表として出場した経歴を持ち、その後アメリカ国籍を取得し、アメリカ代表としてトリノ五輪に出場した。
バンクーバー五輪フィギュアスケート・ペアで4位入賞の川口悠子選手(ロシア)も、ロシア国籍を取得しての出場であった。
参考までに述べると、フィギュアスケート・ペアの場合、男子選手が女子選手をリフトする(持ち上げる)などの要素があり、欧米と比べ体格的に劣る日本人にはペアを組める男子選手の層が薄いという事情もある。
元の国から影響を受ける場合もある
むろん、国籍を変更または新たに取得してまで代表になるような選手は優秀な選手が多いため、元の国籍国にとっては心強い味方だった選手が敵にまわる点から、必ずしも歓迎されるとは限らない。代表的なのが次のケース。日本の女子ソフトボールは今や世界屈指の強豪だが、その基礎を作った宇津木麗華選手(シドニー、アテネ五輪で銀、銅メダル)は中国代表主将として1986年の世界選手権を準優勝した経験を持っていた。
その宇津木選手は1995年に日本に帰化し、翌96年のアトランタ五輪への出場を目指したが、(2)で述べた新しい国籍取得後3年という期間の短縮に中国が同意せず、代表になれなかった経緯がある。
ラグビーは独特のルール
話をラグビーに戻そう。ラグビーは他の競技に比べ国籍のルールがさほど厳しくない。今回のラグビー日本代表に帰化選手5人、外国籍選手5人がいるように、他国にも同様なケースが多い。
その出場資格は次の3つ。
・出生地がその国(例えば日本)
・両親および祖父母のうち、少なくとも1人がその国生まれ
・その国に3年以上継続して住んでいる
ではなぜラグビーは国籍のハードルが低く設定されているのか。
英国の植民地政策の名残
ラグビーの国籍条件が緩和されている理由は、英国の過去の政策に起因する。ラグビー発祥の地は言わずと知れた英国であるが、この国はかつて植民地政策でオーストラリアやニュージーランドなど、世界中に国民を送り込んでいた。
それらの英国人が現地国の代表として出場できるように配慮したのがこのルールのはじまりとされている。
こうした点も、ラグビーというスポーツがどのように発展してきたかを示す特徴と言える。