「しつけ=励ます」「虐待=人権侵害」
次に、しつけと虐待の境界線について考えてみましょう。結論から言えば、ここまではよくてここからはダメというような程度問題では語れません。
しつけや教育的指導とは、子供の成長を促すために励ますことです。しかし虐待は人権侵害です。
子供を一人の人間として敬意を払いながら指導することが、しつけや教育的指導です。子供を自分と同じ一人の人間だと思えているかどうか。それがしつけと虐待をわけます。同じ言葉を発していてもそこが違えば、子供が受けとるメッセージも違います。
わかりにくければ立場を入れ替えて考えてみましょう。「ああ、そうか次からはこうすればいいのか」などと成長につながるメッセージを受け取れている場合にはしつけや教育的指導の効果があるということです。
しかし「怖い」「逃げたい」という気持ちばかりが強くて思考停止状態に陥ってしまう場合には虐待の領域に近づいてしまっている恐れがあります。
実際に子育てしていると、ついカッとなってひどいことを言ってしまうことは誰でもあります。そのとき子供に対して「ごめんなさい」と思えるようなら、それは叱り方を間違えただけ。次から同じことをくり返さないようにできれば、虐待には至りません。
関連書籍
追いつめる親
(おおたとしまさ著、毎日新聞出版、税別1000円)
「あなたのため」という言葉を武器に過干渉を続ける親に育てられ、「生きづらさ」を感じ、自分らしく生きられない子供側の様々なケースを紹介。教育虐待の闇を照らし、その社会的背景を考察し、さらには、「教育とは何か?」「親の役割とは何か?」というテーマにまで踏み込みます。