≪2017年基準地価は上昇地域が広がる一方で一部に停滞も≫ |
2015年(平成27年)の基準地価(都道府県地価調査価格)が9月16日に発表されました。全国平均では、住宅地が前年比1.0%マイナスで24年連続の下落、商業地が同0.5%マイナスで8年連続の下落となったものの、下落率はいずれも6年連続で縮小しています。
全用途(林地を除く)の合計では、上昇が4,701地点(前年4,405地点)で全体の22.6%、横ばいが3,513地点(同3,060地点)で16.9%、下落が12,586地点(同13,334地点)で60.5%となりました。
依然として6割を超える地点で下落が続いている状況に変わりはありませんが、3大都市圏にかぎれば上昇地点が51.0%を占め、下落地点は22.4%にとどまっています。
また、3大都市圏の商業地における上昇率が、リーマン・ショックが起きた2008年以来の大きさとなったほか、名古屋市の商業地では全国一の上昇率となる45.7%を記録しました。40%台の上昇地点が表れたのも2008年以来のことです。
2015年の基準地価の傾向を、もう少し詳しくみていくことにしましょう。
基準地価とは?
基準地価とは都道府県が判定するその年7月1日時点の土地価格で、1月1日時点における公示地価とともに土地取引の目安とされます。2015年の基準地数は、宅地が21,224地点、林地が507地点、合計21,731地点で、2014年よりも9地点少なくなっています。また、原発事故に伴い福島県では避難指示区域内の31地点で引き続き調査が休止されています。
公示地価(2015年は23,380地点)が都市計画区域内を対象とするのに対して、基準地価では都市計画区域ではない住宅地、商業地、工業地や、宅地以外の林地も含んでいるため、平均変動率は公示地価よりも小さめになりやすいでしょう。
基準地価の詳細なデータは、国土交通省による「土地総合情報ライブラリー」でみることができます。また、基準地価と公示地価、路線価との違いについて詳しくは ≪路線価・公示地価・基準地価の違いを知る!≫ をご参照ください。
3大都市圏の基準地価は3年連続の上昇だが、住宅地は減速感も
3大都市圏の住宅地平均は0.4%上がり2年連続の上昇でしたが、前年の0.5%から上げ幅がやや小さくなりました。その一方で、商業地平均は2.3%(前年は1.7%)、全用途平均は0.9%(同0.8%)上がり、いずれも3年連続の上昇となっています。3大都市圏の住宅地では、上昇が1,839地点(全体の44.7%)となりましたが、前年の1,937地点(46.9%)より少なくなっています。そのぶん、下落が前年の1,083地点から1,095地点に増え、とくに東京圏では下落地点が約1割増えました。
それに対して商業地では1,004地点(69.9%)が上昇し、前年の968地点(68.0%)から増加しています。3大都市圏の商業地と住宅地で異なる動きがみられ、郊外地域の住宅地などで地価上昇に歯止めがかかっていることも考えられるでしょう。
その一方で、地方圏では住宅地における上昇が1,202地点(11.3%)、商業地における上昇が495地点(13.5%)でした。上昇地点数の割合は依然として小さいものの、いずれも前年より大幅に増加しています。
なお、1月1日時点の公示地価と基準地価の共通地点(住宅地1,128地点、商業地484地点)における半年ごとの推移では、大阪圏の住宅地が前半、後半とも同じだったのを除き、ほぼすべての圏域で後半のほうが大きな上昇率を示しました。
とくに地方圏では、住宅地、商業地とも後半(2015年1月1日~2015年7月1日)に上昇を示しています。来年の公示地価や基準地価では、地方圏の動きも注目されるでしょう。
都道府県別平均では6都県の住宅地、11都府県の商業地が上昇
基準地価の都道府県別平均では、住宅地において宮城県、東京都、神奈川県、愛知県が3年連続の上昇、福島県と沖縄県が2年連続の上昇でした。また、大阪府が2年連続の横ばい、千葉県が前年までの下落から今年は横ばいとなっています。ただし、宮城県、神奈川県、愛知県は前年よりも上昇率が小さくなり、埼玉県は前年の横ばいから下落へ転じています。三重県と滋賀県は前年より下落率が拡大しました。
商業地では、宮城県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府が3年連続の上昇、埼玉県、千葉県、滋賀県、京都府、沖縄県が2年連続の上昇だったほか、福島県が新たに上昇となりました。さらに、石川県は前年までの下落から今年は横ばいとなっています。その一方で、商業地でも滋賀県は前年より上昇率が縮小し、三重県は下落率が拡大しています。
前年はすべての都道府県で住宅地、商業地とも下落率が縮小、上昇率が拡大、もしくは下落から上昇へ転じていましたから、今年は全体的にみれば勢いが失われているようです。2014年4月の消費税率引き上げの影響が残っていたことも原因として考えられるでしょう。
住宅地の上昇率が最も大きかったのは福島県の2.0%、商業地の上昇率が最も大きかったのは大阪府の3.6%でした。前年はどちらもトップだった東京都は、2015年の上昇率では住宅地、商業地とも2番目になっています。
その一方で、下落率が最も大きかったのは住宅地、商業地とも前年に引き続いて秋田県でした。住宅地が4.0%(前年は4.4%)の下落、商業地が4.6%(前年は5.5%)の下落で、いずれも前年より小さくなっているものの、依然として厳しい状況が続いているようです。
次のページで、圏域ごとの基準地価の傾向を確認しておきましょう。
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