普段は間仕切りを開けて・・
引戸で仕切られたスペースの右側奥に見えるのが寝室。普段は開け放っておけば風通しもよいのです。
家の新築を考えるときには、つい寒い冬や、暑い夏のことだけを考えて、部屋を壁やドアで細かく分けてしまいがちです。けれども四季の明確な日本には、冷房も暖房もいらない「中間期」があります。また、断熱性の良い家では、夏や冬でも設備に頼らずいられる期間は意外にあるものです。
また、寝室のようなプライベートスペースは、必ずしも、いつも完全に独立している必要はありません。普段は開け放っている方が風通しが良くなり、見通しも良いので家が広く見えます。
引戸のレールは、フローリングに埋め込んであるので目立たず、つながりを分断しません。
互いにつながった空間を鴨居(かもい)や敷居が分断してしまわないよう、引戸を天井一杯の高さにして、引戸を開けると天井がつながって見えるようにしたり、レールを床のフローリングに埋め込んで目立たないようにするなど、ディテールにも工夫がしてあります。
住まいの主役は住み手と自然光
住まいの主役はそこで生活する住人であり、住まいの空間はそこに差し込む光が作るもの。家はあくまでも、住人や光の背景です。白く統一された壁・天井や、淡く染色して主張を抑えた無垢材のフローリングは、住み手や家具、そして太陽や照明の明かりが引き立つように、注意深く、素材と組み合わせが選ばれています。家中が中庭と空に向かって開かれ、自然光の中で過ごせる「M邸」。バスルームも例外ではありません。
「M邸」は隣家が接近した住宅地に建っていますが、カーテンやブラインドを使わなくても、周囲の家からの視線を気にせず開放的に暮らせるように、窓は中庭と空に向けて開かれています。私たちは、高価な素材を使うことより、「自然光を存分に楽しめること」が、都会の住宅では本当の豊かさにつながると考えているからです。
現代の民家を目指したオール電化住宅、いかがだったでしょうか?これから年月を経て、この家がどのように育っていくのか、私たちも楽しみです。