国産の生キクラゲのニーズが高まる
中華料理などでおなじみのキクラゲ。多くは中国産の乾物です。
キクラゲはキクラゲ類の総称でもあり、日本ではキクラゲ(黒)、シロキクラゲ、アラゲキクラゲがあります。
キクラゲの料理で馴染みがあるというと、黒いキクラゲが中華料理の八宝菜やきくらげ入りの白天、白キクラゲは中華デザートなどに使われていますね。ただ、ご家庭でキクラゲをお料理に使うことは少ないかもしれません。
近年は国産の生キクラゲも全国で栽培されています。
もともと全国的に自生していますが、近年は国産の生への需要が増え、優れた菌床栽培用の品種が開発・販売されるようになったこともあり、北海道から九州まで全国で栽培されるようになりました。
国立研究開発法人森林総合研究所 九州支所「九州の森と林業No.112 2015.6」によると、次のように年々生産量が増加しているようです。
平成25年のキクラゲ類の国内生産量は785トン(生換算)で、5年前の約4倍に増加しました。このほとんどあらげきくらげです。 ~略~ ただ国内生産量が増加したといっても、平成25年の自給率は3%にすぎず、今後とも生産量の増加が期待されます。
中国では長寿&美肌の食べ物
江戸時代初期書かれた『和歌食物本草』(中国の本草書を歌の形でかかれた食物本草書)にはキクラゲの記載があり、キクラゲは五臓を和らげ、気力を増して身を軽くするなどの働きが、歌にされています。淡白な風味であまり主張のあるものではありませんが、中国でも不老長寿の薬として珍重され、漢方薬や薬膳に使用されます。クロキクラゲとシロキクラゲでは、胃腸を整える働きは共通ですが別の作用があるといわれ、クロキクラゲは滋養強壮に、シロキクラゲは肌を潤す美肌作用や整腸作用があるとされています。
では栄養面ではどうなのでしょう。表のように乾物には様々な栄養素が多く含まれ、ここでは紹介していないミネラルやビタミンB群、鉄分の含有量も多いのですが、実際に水でもどし茹でたきくらげになると、特に多く見られるのはビタミンDです。
ビタミンDはカルシウムの吸収を促して骨の形成に役立つことが知られていますが、他にも免疫調整などにも関わると考えられています。
また食物繊維がたっぷり含まれています。不溶性食物繊維は腸の中で水分を保って膨らみ、便秘の予防・改善に役立ちます。また水溶性食物繊維は血糖値の上昇を抑え、コレステロールや有害な物質を吸着し体外に排出します。このような食物繊維を適切に摂取することで、腸内環境を整え免疫機能をきちんと働かせたり、生活習慣病予防にも役立つと考えられています。
中国では「銀耳」と書くシロキクラゲは、唐時代の絶世の美女、楊貴妃が美容のために珍重したと言われています。近年は、シロキクラゲから抽出した多糖体は保湿効果が高いことから、スキンケア用品や医薬品などにも利用されています。また抗酸化作用や血中コレステロール低下作用、脂肪吸収抑制作用、血糖値上昇抑制なども認められ今後の研究が期待されています。
シロキクラゲの配糖体という特定成分による研究ですから、シロキクラゲを食べた場合にはどれくらいで効果があるかなどは不明です。偏った食べ方はせずに、栄養のバランスを考慮した上で日々の食卓でキクラゲをおいしく利用しましょう。