江戸時代に剣豪たちも歩いた柳生街道「滝坂の道」
「柳生新陰流」の剣術で知られる柳生家が、江戸時代に治めた柳生の里は、奈良市街から東へ約17kmほどのところにあります。新薬師寺などのある高畑町から柳生の里までを結ぶのが柳生街道。とくに、街道の中間地点にあたる円成寺までは、江戸中期に奈良奉行によって敷かれた「石畳の道」や、路傍の岩壁に彫られた古い石仏が残っており、「滝坂の道」と呼ばれる、風情豊かな人気のハイキングコースになっています。
「東海自然歩道」の道標に従って歩いて行く
新薬師寺から東に進み、「東海自然歩道」の整備された道標に従って歩いて行くと、やがて道は能登川の渓流沿いの石畳の山道に。
能登川沿いに整備された石畳の道「滝坂の道」。昭和のはじめ頃まで、柳生の里へ運ぶ荷物を背に積んだ牛馬が行き交ったという
路傍の岩壁には、所々に「寝仏」、「滝坂地蔵」、「夕日観音」、「朝日観音」といった石仏が彫られています。
川向こうの崖に彫られた「朝日観音」。鎌倉時代に彫られたもの
山道に入って2kmほどで、休憩用の東屋とトイレが整備された場所があり、三叉路になっています。この分かれ道の目印になっているのが、首の部分が折れた「首切地蔵」。言い伝えによれば江戸時代初期の剣客・荒木又右衛門が試し切りしたのだとか。
剣客・荒木又右衛門が試し切りしたという「首切地蔵」
三叉路の少し先で、道はいったん「奈良奥山ドライブウェイ」に合流。その後、ふたたびドライブウェイを離れ、木立の中の峠道を進んでいきます。
やがて、その昔、石切場だったという「石切峠」付近を歩いていると、周囲の木立に溶け込むようにたたずむ「峠茶屋」の昔ながらの建物が、忽然(こつぜん)と姿を現します。江戸時代から続くという、この店の名物は草餅。かつて柳生街道を往来した剣豪たちも、ここでお茶をすすりながら一服したのかもしれません。
峠を下ると視界が開け、長閑な田園風景の中に小さな集落があります。ここから、円成寺まではおよそ4km弱の道のり。
周囲の紅葉が色付きはじめた、円成寺の浄土式庭園(2014年10月下旬撮影)
円成寺は、柳生街道の中で最大の見所。池を中心とする浄土式庭園が広がり、秋には紅葉も美しく色付く山間の名刹です。
円成寺境内の春日堂・白山堂(国宝)と紅葉
今回は、円成寺で夕方になりましたので、ここから奈良市街にバスで引き返します。柳生の里まで行くのなら、朝から滝坂の道を歩き始め、円成寺前の「忍辱山(にんにくせん)」バス停からバスで柳生の里へ向かうのがおすすめです。
<DATA>
■柳生街道「滝坂の道」(高畑町~円成寺 約9.5km)
イラストマップなど → http://www.tokai-walk.jp/course_guide/course16.html
■円成寺
住所:奈良市忍辱山町1273
アクセス:近鉄奈良駅から「柳生、邑地中村、石打」行きバス、「忍辱山」下車すぐ
ホームページ → http://www.enjyouji.jp/index.html
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