一気に増えたクリーンディーゼルモデル
石原元都知事が真っ黒な煤(すす)の入ったペットボトルを振った姿を覚えている方もいるだろう。東京、神奈川、千葉、埼玉が2003年10月からスタートさせたディーゼル規制ではPM(Particulate Matter/粒子状物質)の抑制が主眼で、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)をトラックなどに装着するニュースなども流れた。
乗用車には「脱ディーゼルエンジン」という流れが起き、現在のクリーンディーゼル規制である「平成22年排出ガス規制」、いわゆる「ポスト新長期規制」といわれる規制をクリアしたものを一般的にクリーンディーゼルと呼んでいる。
世界初のクリーンディーゼル搭載車は、先代の日産エクストレイルだが、当初は上級仕様で、しかもMTしかなかったためそれほど存在感を示せなかったが、その後、メルセデス・ベンツ、BMW、三菱、マツダと続いているのはご存じのとおり。
ボルボに続き、アウディ、ジャガー、VWも日本市場に参戦
最近では、BMWの車種によっては5割を超えているほか、マツダは新車の半分以上がクリーンディーゼルになっている月もあり、今後もその流れは続くだろう。さらに、ボルボが日本にも上陸させ、近い将来アウディ、年内にもジャガー、来年にはフォルクスワーゲンなども日本にクリーンディーゼル搭載車を導入する構えだ。
欧州の最新の排出ガス規制である「ユーロ6」をクリアすれば、そのまま日本の「ポスト新長期」に対応するわけではないが、欧州勢が「ユーロ5」だった時よりも対応しやすくなっているのは間違いない。ほかにも、BMWの日本での成功を指をくわえてみている訳にはいかない、というインポーターの事情もあるだろう。
ディーゼルの課題は、PMだけでなくNOx(窒素酸化物)をいかに出さないかが大きく、PMを減らすとNOxが増え、NOxを減らすとPMが増えるというトレードオフの排出特性がある。
さらに、ディーゼルエンジンの燃焼温度を高めるとNOxの排出量が増加し、逆に燃焼温度を下げてNOxの排出量を抑制すると、CO(一酸化炭素)や炭化水素(HC)、さらに冒頭で紹介した例の煤まで増えるという、相反する要素と向き合う必要があるのだ。
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