不妊症

むつごろう薬局訪問記(静岡)(2ページ目)

このたびは不妊治療を得意としているむつごろう薬局に取材に参りました。この薬局のオーナー薬剤師である鈴木寛彦先生は大学の私の同級生でもあります。

執筆者:池上 文尋

薬局を出すときになぜここを選ばれたのですか

当初、私は富士山が大好きで、静岡が地元ですが富士山が見えるところで仕事がしたいなと思いました。どっしり構えて、動じないで、凛として立っている富士山をみるとすごく元気がでるのです。単純に、ロマンとして富士山を見ながら仕事がしたいなというところです。

静岡店は、たまたま通りかかったら、店舗が空いていたのです。これは今思うと、導かれたのかなと思います。やり始めたら、ここが徳川家康公の薬草園跡だったとか。不思議な話ですが、たまたま勉強会に参加して、田畑先生の講義を聞いたのです。

自分の手で漢方を作っているとかと仰っていて、面白い人がいて、自分には縁が無いだろうなと思っていたら、その田畑先生のお友達が麻布の中村先生で、その先生が函南で薬草園をやっていて、修行させてもらって、ここにたまたま来て、入ったら薬草園跡で、掃除してたらNHKが来て取材してくれて、徳川家康の薬を作ることができました。そんなストーリーまで考えていなかったんですけれどね。

kanpo

薬局前の駿府城のお堀横で薬草を育てている

薬を作れて、民放の取材などを受けたりします。TVに出ずに情報提供をしていたのですが、TVに出ることが目的ではなく、勉強させてもらっています。きっかけや課題を家康公に与えられているような気がしています。だから堀を綺麗にしなければと思っています。ちょっとまた雑草が生えてきて、これから掃除します。

むつごろう薬局の強み、すごいところは、自分たちで畑をやっているところだと思うんですね。ちゃんと作って、取ってきて、乾かして、薬にまでもってくる、というところに興味をもって、惹かれている人がすごく多いと思うのですが、畑をやろうと思ったきっかけ、今どれくらいやっているのかなど、畑についてお話いただけますか

やっているといえないです。アピールポイントではなく、自分を磨くようなものなので、農家の方からしたら笑われるようなものですし、やっているレベルではないです。

薬草を育てようと思ったのは、師匠の田畑隆一郎先生の影響です。田畑先生がやっていた、こんなことをやっている人がいるんだって知って、そこを師匠に見習っただけのことです。中村先生に出会い、実際にできるきっかけがあったので、畑については偉そうなことは言えません。

私がやっていたわけではなく、先生がやっていたわけですから。師匠に追いつきたいという気持ちでした。でも実際にやってみると感性が付きます。

感性についてですが、五感が研ぎ澄まされるというようなことでしょうか

はい。わかりやすい話をすると、当帰を育てていると、当帰とそっくりな雑草が横に生えてくるのです。これは植物の類似性、雑草の類似性というみたいなのですが、自分の身を守るために、抜かれまい、種を残そうとしているんです。カメレオンと同じです。似させるんでしょうね、本物と偽物の見極め方が勉強になります。

みなさんは、雑草とか畑を見て、地上部だけみるのですが、大切なのは地下なんですよね。やはり根っこが勝負、根がしっかりしていると風が来ても、乾燥しても生き残るんですけれど、根っこがしっかりしていないとすぐ倒れちゃうんです。そういう勉強になっています。

kanpo

ご自身で畑にて育てられたトウキがありました!

匂い、湿度、温度とかを肌で感じながら、こういう環境にはこういうものがいいんだな、ということが分かったりします。それを店で相談に使えるわけですね。この人はどこに原因があるのかな、どこら辺があやしいのかなというのを感じ取れる能力がつくので、そういうところが勉強できるところです。

薬草は育てているのですが、全員に使えるような量も取れていませんし、そこまで発展していません。医薬品工場まで作りました。2005年~2010年くらいだったでしょうか。畑のものを製品化していたのですが、製造責任などの問題がでてきて、医薬品製造法の基準が上がり、環境が厳しくなったので、片手間ではできないと思ってやめました。

生薬を加工して、モノを作るというところまで勉強しました。薬草を育てるだけではなく、加工、乾燥する、そしてそれが薬局で漢方として使われるようになるまでの過程を経験し、とてもいい勉強になりました。

偉そうなことは言えないですけれど、あくまでもその漢方の素材がいいものか悪いものかを見極める力を追求しています。最終的にそこまで行けたらいいなということです。

漢方薬局っていっぱいありますよね。なんちゃって不妊漢方も増えて、お客さんはたぶんクオリティーの部分を全く分かっていないと思うのです。困って相談に行ったら、勧められて、それを服用しているだけだと思うのです。漢方もかなりクオリティーにおいて、今後知っておかなければいけないことがあると思います。患者さんサイドで薬局を見抜く方法はありますか

一番わかりやすいのは、刻みを使っているかどうか。歴史から言うと、エキスは本来の漢方ではないのですからね。例えば、葛根湯の「湯」って、何かと言うと「煎じる」という意味です。当帰芍薬散の「散」は、「毒を散らす」という意味と同時に「粉末にする」という意味で、八味丸の「丸」は、はちみつでそれを固めるという意味です。粉とか丸薬はあるにしても、煎じをしっかりやっているかどうかがポイントでしょう。また、ある面、多角化していないほうがいいのかもしれませんね。

例えば、本当に最高の友人をご招待するのに、チェーン店のレストランには連れて行かないですね。多くても2~3店舗くらいしかやっていないような、高級なところに行きますよね。
kanpo

漢方薬を保存しておく棚です。


大好きなフーガってお花屋さんが青山にあるのですが、フーガの社長さんに「なぜこんないいお店、多店舗しないんですか」と聞いたことがあるのですが、「クオリティーが落ちるから」って言われました。

「クオリティーが落ちないならいいけど、落としてまで広げたくない」ということでした。広げれば広げるほどクオリティーが落ちるとは正直思いましたね。誰でも大きくなりたいと思います。

植物も雑草もそうです。大きくなりたい、増やしたい、富を得たいというのはあるかもしれないですが、やはり本当にいいものは、そうそう増えないですよね。

また、漢方薬剤師は職人と考えていいので、あまり口数が多くない方がいいかもしれませんね。

漢方ってめちゃくちゃ高いわけはないので金額に限度があると思います。ベラボーに高かったらちょっと。それから、あれもこれも付け加えたら、漢方はわからなくなっちゃいます。また、その薬が合うかどうかを判断しているかどうかも重要ですね。

薬の効きめの判断を教えてください。どれくらい飲んでみて判断するのでしょうか

1ヶ月みて変わらなければ、何らかを少しずつ変えていくでしょうね。でも、方法があって、胃腸系がものすごく弱い人や慢性化疾患の人は変化が難しいですね。そんなに変わるわけではありません。

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