ソニー不動産の銀座オフィス
2015年7月には、Yahoo! JAPANと提携し、最初の取り組みとして不動産の所有者が自らマンションをマーケットに売り出せるプラットフォームを開発すると発表しました。同じく7月に、オンラインストアAmazon.co.jpの「リフォームストア」に出店し、工事費込みのリフォームパッケージ商品の提供を開始しています。
次々と不動産業界に新しい取り組みを仕掛けるソニー不動産ですが、それによってユーザーにどんな選択肢が広がるのでしょうか?不動産業界は変わるのでしょうか?
公平性、合理性、専門性を徹底追及するソニー不動産モデル
立ち上げ当初、ソニー不動産が方針として打ち出したのが、公平性、合理性、専門性の徹底追及です。ソニー不動産モデルとも呼べる新しいサービスが、不動産売買仲介業界に一石を投じると話題になりました。■ソニー不動産のサービスの特徴
(1) 米国型エージェント(代理人)制度の導入(公平性)
(2) 仲介手数料の合理化 (合理性)
(3) 新しい情報システムの活用等による顧客ニーズの追求(専門性)
少し分かりづらいので、背景を説明しましょう。
日本では新築の分譲住宅を購入する比率が高いのですが、欧米諸国では中古住宅を売買して住み替えるのが中心です。(日本では、新築:中古の割合がおおよそ8:2であるのに対し、米国では、新築:中古の割合がおおよそ2:8となっています。) そのため、アメリカでは過去の売買価格や修繕履歴などの情報が公開され、売り手と買い手にそれぞれエージェントが付き、売り手買い手双方の利益を守るような仕組みになっています。
日本で中古住宅や土地などを個人が売ったり買ったりする場合は、不動産会社が仲介します。ただし、過去の売買価格などは不動産会社にしか公開されていませんし、不動産の売却を依頼された不動産会社は、自社で買い手を見つければ、売り手買い手双方から仲介手数料が受け取れるので、できるだけ自社で買い手を探そうとします。
不動産会社が自社の利益を優先した場合、売り手や買い手は適正な相場が分からないまま、売買の機会を逃したり、売り手にとっては相場よりも安く、買い手にとっては相場よりも高く取引が成立したりといった不利益を受ける可能性があるわけです。
ソニー不動産モデルでは、既存モデルと売り方が違う
米国型のエージェント制度を導入するということは、具体的にどういうことでしょう。ソニー不動産では、社内で売却と購入の担当者(エージェント)を分け、双方を担当することを原則禁止しています。そのため、たとえば売却エージェントを例にとると、売却エージェントは売り手だけの立場に立ち、売り手の希望の条件に合った買い手を広く探すための売却戦略を提案します。買い手側の業務を行わないため、自社の買い手を優先することはなく、売り手のみの立場から買い手側と粘り強く交渉ができるので、売り手の満足を追求できるというわけです。また、不動産会社が売り手・買い手から受け取ることのできる仲介手数料は、法律で上限が定められています。物件価格の3%+6万円(消費税別)といわれるのは、この上限額のことです。この上限額を仲介手数料としている場合、高い物件を扱う方が同じ手間でも高い仲介手数料を受け取れるため、高い物件のほうを優先するということにもなりかねません。
そこで、ソニー不動産では、独自の合理的な仕組みを取り入れ、業務の手間や成約までの期間に応じて変動する新しい仲介手数料体系を導入しています。
こういった新しいビジネスモデルが、不動産業界に風穴を空けると話題を呼んだのですが、筆者が気になったのは、次のような点です。
- Q:新しいビジネスモデルの狙いは何か?ユーザーに受け入れられているのか?
- Q:なぜリフォーム定額商品を取り扱ったり、ヤフーと提携したりするのか?
>>次からは、不動産業界に新しい選択肢を提供したいというソニー不動産のキーマンのお話を紹介します。