お金持ちとはどんな人?
「お金持ち」と一口にいっても、土地持ちの資産家から、資産何兆円以上のビルゲイツさん等々、上を見ればきりがありません。さすがに大富豪の金銭教育は、私たちとはかけ離れすぎているし、私のお客様にもいらっしゃいませんので(そのような方々は、FPではなくプライベートバンクですね)今回は除外とします。今回は、おそらく土地を除く金融資産が1億円以上、世帯年収がおよそ3000万円以上もしくは、ご本人達が何もなさらなくても、生活出来る収入がある「お金持ち」のお話です。この方達はお子様にどんな金銭教育をなさっているのでしょう。
特徴のある5人の方を2つのタイプに分けてご紹介します。お金持ちの金銭教育なんて参考にならないわ、などと思わず、我が家のポリシーに合った金銭教育法を見つけるヒントにしてくださいね。
のれん派お金持ち
日本には100年以上続く老舗企業が多く、10万社以上あると言われています。そういう創業者一族が代々受け継いで来た会社の社長は、自分の子どもの金銭教育を間違えると、会社を一代でつぶしてしまう事になりかねませんので、子どもの教育にはとても熱心です。金銭感覚の特徴としては、一族のお考えを重視し、とてもお金を大事になさいます。ただ、「もったいない」という言葉もお好きですが、価値があるもの、必要があるものにはしっかりお金を使います。
のれん派実例1:老舗企業社長夫人A様
A様は、お子様が欲しがる、おもちゃ、お菓子も、必要な物以外はお買い求めになりません。お子様も「これは、買っていいですか?」と必ずお母様にお聞きになります。お母様は「今日は100円のお菓子を1つですよ」「(値引きシール付きのお菓子を見せ)今日は、このシールのお菓子ですよ」「今日は買いませんよ」と、お話しになります。そのお子様は小さい頃お菓子が大好きで、「買って!買って!」と何度もだだをこねたそうですが、その都度お子様に「お金を持っているのはお母さんなので、買ってもいい日、いい物はお母さんが決めます」とお話なさったそうです。
「買って!」が続く最初のうちは、1人で出かけられる日に買い物に出かけ、お子様を連れて行く日は家を出る前にお約束。これを繰り返したそうです。
■A様の金銭教育の考え方
A様は、金銭教育の基本である「欲しい物」「必要な物」を理解させることに徹底しています。お買い物に行ったら欲しいお菓子を買ってあげるという習慣が出来上がると、必要がなくても「買ってもらえる」というルールが出来ます。A様は、安いからまとめて買う、お子様がぐずるので買うという事はなさいません。この姿勢は出来るようでなかなか貫けないものですので参考にしたいですね。
のれん派実例2:不動産オーナーB様
旅行が好きなB様。ご夫婦お2人の海外旅行は、ビジネスクラスでスイートに泊まる事もあったそうですが、お子様と一緒の海外旅行は、エコノミーで普通のクラスのホテルにお泊まりになります。あるときの国内旅行は、なんとビジネスホテルに!それも、シングルルームにお泊まりでした。どうしてですか?とお聞きすると「子ども達も、夫も、わ~い1人で一部屋だね!小さくて基地みたいでカッコいい!って大喜びですよ」とお答えになりました先祖代々地主さんで、大きなご邸宅にお住まいのB様。大きなお部屋が何部屋もあり、広々としたリビングがあたりまえ。温泉旅館に泊まった時に「家と変わらないね!」とお子様達がおっしゃって以来、お子様にマナーと価値観が身に付いてから、上質の旅をと決めていらっしゃるそうです。
■B様の金銭教育の考え方
B様は、見栄を張ると言う事には無縁です本当にお金持ちですから、見栄を張る必要もありません)。普段は大きなお家だから、旅行はシングルルームでOK!シングルルームなんて恥ずかしいとは、お思いになりません。人にどう見られるかよりもご自身のお考えを優先されます。また、実際他のお金持ちのお客様の中にも、自分は子供の頃に海外旅行や国内のリゾートホテルに連れて行ってもらったけどよく覚えていないから、贅沢な旅行は子供が大きくなってよいものがわかる価値観が身についてからでいい、という方もいらっしゃいます。
のれん派実例3:医療法人役員夫人C様
お医者様の家系のC様。高校生のお子様も将来お医者様になる事が、一家の願いです。C様のお宅は、おこづかいはありません。お子様は中学から全寮制の一貫校に通っていらっしゃいます。日常生活に必要な校内の買い物は、学校のIDカードで買えるそうです。休日や夏休み、冬休みに必要な物は、お子様から相談を受け、親が必要か必要でないかを判断の上、お金を渡すそうです。C様いわく「私も学生のうちは、おこづかいがありませんでした。親がお金を出して勉強をさせてもらっているのに、必要のないものを買ったり、勝手に遊びにお金を使うことなんてできませんでした。またバイトも禁止でした。勉強をする時間にバイトなんてもってのほかです。必要な物は、その都度相談して買ってもらいました」
■C様の金銭教育の考え方
C様は、ムダな遊びの時間やお金は使ってはいけないというお考えです。ただし、ここで必要か必要でないかはまずは親が判断します。そしてもし必要でない場合、なぜそれがムダなのかを説明し、親子で共通の認識を作るようにしています。
「バイトくらいしなきゃ、お金のありがたみが分からない!」「子供のうちから、お金のやりくりを学ばせた方がいい!」と考える方も少なくありません。C様のお子様は学校のIDカードの裏にご両親の写真を入れ、お金を使う時には、遠くにいる両親に感謝をするのが習慣になっているそうです。また、C様はお金のやりくりを学ぶのは、学校を卒業してからでいいというお考えです。
以上、のれん派お金持ちの金銭教育の事例を3つ紹介しました。お金持ちだからといって、子どもに裕福な環境を与えたい放題なわけではありません。むしろ我が家よりもお金についてきちんと厳しく教育されていると思ったかもいるのでは?
セレブ派お金持ちの場合
このセレブ派お金持ち方々は、良いものを身につけ、良いものを食べ、良いものに囲まれて暮らすことで、良い人脈、良い仕事、良い暮らしを手に入れようという考えです。これはお子様の金銭教育についても同じで、ご幼少の頃から、常に上質の暮らしを経験させる事をポリシーとしていらっしゃいますセレブ派お金持ち実例1:会社役員D様
D様のお子様は、両家にとっても初孫。生まれる前から、それはそれは、慎重に出産までの時期を過ごされました。里帰り出産で病院の個室をご予約なさっていたにも関わらず、ご出産直前に「やはりこの病院では心配」と別の病院に変えられる程でした。生まれたお子様のために、産褥(さんじょく)シッターさん(新生児の沐浴のお手伝い、簡単な家事を手伝う専門のベビーシッター)が、毎日ご実家でお世話。ご実家からご自宅にお帰りになる際は、揺れを気にしてハイヤーで、高速道路も80キロの慎重運転だったそうです。お子様が3才になったある日、デパートの屋上でご一緒させていただきました。デパートの屋上には乗り物がありますが、D様のお子様は「あれに乗りたい」「こんどはこっち」と大喜び。とうとう全部の遊具を制覇され、さらに「まだ乗りたい!」と、何度もお気に入りの自動車に乗り、最後はご自身がお母様を乗せ上手にハンドルを握っていらっしゃいました。
■D様の金銭教育の考え方
D様は、小さいときの経験こそが、大きくなってからの可能性を広げるので、子どもがお金を使う事は将来への先行投資というお考えです。
「子どもには、私の出来る範囲で何でもやりたい事をさせてあげたいですね。小さいうちにいろんなことを経験する事が、大きくなった時にいろいろな事に興味が持てると思うから。大きくなって、留学したい、医者になりたいと言ってもいいように今から準備はしています。それに買ってはいけない、ダメと言うと余計欲しくなりますよ。一度お腹いっぱいになれば、もっと食べたいとは言わないでしょ。ブランド品がたくさん買いたくなるのは、せいぜい20代までです。私がそうでしたから」とD様。
同じお金持ちでも「のれん派」のママなら、「○○ちゃん、また今度にしましょうね」もしくは最初に「今日は3つですよ」、とお約束なさるでしょう。どちらがいいのか?ではなく、どちらも、そのご家庭には合っています。1回100円から200円程度の乗り物に、20回乗ったとしても、3000円~4000円です。出せない額ではありませんが、子供に遊ぶ時は、気がすむまで遊ばせるのか、我慢させるのかお家によってルールを作る事が大事です。
セレブ派お金持ち実例2:歯科医E様
E様は、常日頃からお子様に一番いいものを使いなさい、一番いい物を食べなさい、おっしゃってきました。外食も、お子様が小さいときからファミレスではなく、ホテルのレストラン、しゃぶしゃぶ、ステーキハウス、焼き肉、鉄板焼き(お肉がお好きです)、お寿司屋さんなどに行く機会が多かったそうです。「私自身が食べることが好きなので、迷ったら一番いいものを頼みなさい、そうすればどんな店でもそれほどマズいものはない、いいものを食べないのにマズいと文句を言ってはいけない、とよく言ってきました。そのかわりこういう美味しいものを食べたかったら、しっかり努力(勉強)しなさい(そして良い仕事につき良い食べ物が食べれるくらいお金が稼げるようになりなさい)という事が一番言いたいんですけどね」とおっしゃいます。
■E様の金銭教育の考え方
お金持ちは「一番いいもの」をポンと買い、良いものだと信じているからクレームも多くありません。買い物の度に、「どっちがおトクか?」をやっている人は、どんな小さな事でも気に入らないと損した気になってクレームをつけますが、そんな人になってはいけません、というのがE様の教えです。「安いクライアントほど、いっぱい文句言ってくるんですよね」というのは、ある広告代理店の営業マンの話。そこにいた一同がうなずきました。
余談ですが、「京子さんもベンツのSクラスの新車に乗ってごらんなさい。そうしたら、本当にベンツがいい車だってわかりますよ」と、E様に言われ、クルマ音痴の私は肝心のSクラスが分からず「4年落ちの中古ではダメでしょうか?」と反射的に、『減価償却で初年度全額』と確定申告の経費の計算が出て来てしまいました。(そんなに、経費で落とす必要もないのに!)「新車です」とE様はにっこり。努力しなさいと言われている気がいたしました。
いかがでしたか?おこづかい帳をつける、ムダな買い物をしない、金利について教える、お金が果たす役割について教えるという一般的な金銭教育はもちろん大切です。しかし、もっと大事なのは親としてお金を通して、何を子供に伝えるか。今回紹介したお金持ちの方々は、お金持ちだからといって子どもを裕福な環境を与えたい放題なわけではありませんし、また生まれながらのセレブちゃんも単に贅沢で怠惰な暮らしを与えられているわけではありません。ケチでも浪費でもなく、親がお金を通して子どもに伝えたいことを徹底させているのです。是非、みなさんも我が家のルールを作ってみてくださいね。