減らしたい油

■飽和脂肪酸の多い油脂
脂肪は脂肪酸とグリセリンからできています。脂肪酸とは酢の主成分の酢酸(炭素数2)と同じようなものが直鎖で長く連なったもので、炭素鎖の短いものは酢酸のように水溶性ですが、炭素数が大きくなると水にはほとんど溶けず、味もしません。自然界にあるのは炭素数(C)4~30のものですが、炭素原子が途中で枝分かれせず、炭素同士の2重結合も他の官能基も持たない脂肪酸を飽和脂肪酸と言います。

おもな飽和脂肪酸としてはココナッツオイルの主成分である高エネルギーのラウリン酸(C12)、体の中でコレステロール合成を刺激するパルミチン酸(C16)、血液中の中性脂肪を高めるステアリン酸(C18)などがあります。

なぜ飽和脂肪酸を減らせと言われるのでしょう?

それは血中コレステロールや中性脂肪を高めるからです。悪玉コレステロール値が高いのは心臓病のリスク因子ですし、ただでさえ糖尿病患者は心臓などの大血管症のリスクが高いのですから、やはり控えたいものです。

メタボや太っている2型糖尿病ではインスリンが不足しているのではなく、作用不足のため逆に過剰にある状態であることもあります。インスリンは体のコレステロール合成を促進する作用がありますから、更なる食品中のコレステロールや飽和脂肪酸の取り過ぎに注意したいものです。糖尿病以前のメタボでも心臓死のリスクが高まっているのはよく知られています。

ところでラウリン酸を"高エネルギー"と書きましたが、これには理由があるのです。どんな脂肪も約9kcal/gと算定されていますが、これはボンブカロリーメーター(試料を鉄の容器のなかに加圧した酸素とともに詰め込んで、爆発的に燃やしてそのエネルギーを計測)で得た数値です。ところが、哺乳動物の体では別の結果がでるのです。
マウスの体重増加を指標にして、いろいろな脂肪のエネルギー発生量を計測してみると、バターのエネルギー発生量が最大で、植物油、牛脂、豚脂、魚油の順でエネルギー発生量が下がりました。これは脂肪を構成している脂肪酸の違いによるもので、飽和脂肪酸ではバターやココナッツオイルに多いラウリン酸(C12)のエネルギー発生量が一番高く(つまり体重増)、これより炭素数が増えても減っても低くなります。
ラウリン酸のような中鎖脂肪酸はすぐに肝臓に入って代謝されるので、体脂肪になりにくいダイエットオイルと吹聴されていますが、極端な糖質制限食(ケトン体ダイエット)でもしない限り、マウスが太った最も高エネルギーのラウリン酸(ココナッツオイルなど)で何もせずにやせられるとはとても思えません。

減らしたい食品:バター、ラード、豚背脂、ベーコン、ソーセージ、スペアリブ、挽き肉、減脂してない乳製品、チョコレート(カカオ脂)、パーム油、ココナッツオイルなど。

■トランス脂肪酸
常温では液体の植物性オイルに水素を添加して固形にする技術が1902年にドイツで開発されました。マーガリンの発明です。ただ、脂肪酸の2重結合が自然界(シス型)には少ないトランス型になるので、1990年代になってその害が指摘されました。トランス型の代謝は自然のシス型のものに比べると別の酵素を必要とするので代謝速度が遅く、体の中に次第に蓄積されてしまいます。悪いことにトランス型の脂肪酸は心臓や肝臓の細胞膜(リン脂質)に取り込まれやすく、高いレベルで沈着します。

米国ではファストフードや加工食品のトランス型を減らしていて、2006年から栄養成分表示に記載することが義務になりました。更に2018年6月以降は食品への添加が禁止になります。トランス型脂肪酸はフレンチフライなどのファストフード、製菓製パン、マーガリン、ショートニングなどに含まれています。日本では摂取量が少ないという理由で特別な措置はとられていませんが、糖尿病者はご注意を!

体にいい油

■一価不飽和脂肪酸
一価不飽和脂肪酸はヘルシーオイルの代名詞です。悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールには影響を与えないからです。なんと言ってもオレイン酸の多いオリーブオイルが代表ですが、キャノーラオイル(なたね油)、ピーナッツオイル、ゴマ油などに含まれ、アーモンドなどのナッツ類にも多くあります。飽和脂肪酸を減らしてこれを代替するのが油を増やさないコツです。

■多価不飽和脂肪酸
リノール酸やα-リノレン酸は必須脂肪酸ですから、当然ながらヘルシーオイルの代表です。リノール酸は野菜、肉類、穀類、乳製品、玉子などに含まれています。ただ家畜の餌にトウモロコシを多く使うので、今では食物連鎖で私達は過剰なリノール酸を摂取しているようです。バランスが大事ですからイワシやニシンなどの海産魚介類、シソ実油などのα-リノレン酸の食品を意識して摂取しましょう。

オメガ3系不飽和脂肪酸

直鎖脂肪酸に2重結合があると、その位置を表わすのにグリセリン側の鎖のトップ(カルボキシル基)から数えるのと、ラスト(メチル基)からの2通りの方法があり、表記法(オメガ、n、デルタ)が3通りもあります。化学者は正規のトップからのデルタ(Δ)を使いますが、生物学者や栄養学では意味のある2重結合のある位置を示しやすいオメガやn(エヌ)を使います。オメガはギリシャ語の「Z」ですから、オメガ3系とは最後から数えて3番目の炭素に2重結合のある脂肪酸を示します。n-3も同じ意味です。哺乳類はΔ9(オレイン酸)までの位置に2重結合を作ることができますが、その先は酵素を持っていないので作ることができません。だから食物から摂取するしかないのです。オメガ3系はEPAやDHAが代表的なものです。

多価不飽和脂肪酸はエネルギーだけでなく、血液凝固、血栓防止、アレルギー、炎症、がん、細胞機能の恒常性など、遊離の状態で生理活性を示すものが多くあります。イワシ、サバ、サーモン、マグロ、ニシン等をフライにしないで週2~3回食べようと米国糖尿病協会は勧めています。
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