オリーブは体にいい油の宝庫です。有史以来の安全性がそれを証明しています。

オリーブは体にいい油の宝庫です。有史以来の安全性がそれを証明しています。
(c) Kawai Katsuyuki

魚を食べると魚油に含まれるEPAの作用で小腸のL細胞からインクレチンが放出され、インスリンが分泌されます。そのため、まず食事の始めにEPAに富むサバ缶を食べよう!という提案があります。

冗談なのかマジなのか分かりませんが、他にも食事の始めに野菜だけをモグモグと長くかんだり、著名な医大教授のケトン体ダイエットを真に受けて食前のコーヒーにココナッツオイルを13gも入れて飲んだり、日本の糖尿病患者の食事は人によってはいささか風変りなものになりつつあるようです。

糖尿病と油脂

糖尿病マネージメントは血糖値のコントロールが中心ですから、栄養成分においては炭水化物(糖質)の量と質の管理が主になります。

高カロリーの脂質はいつも目の敵にされて低脂肪食が勧められていますが、数値として日本ではカロリー比で25%以下、米国でも30%以下の摂取が一つの目安です。

米国で行われたDPP(糖尿病予防プログラム)やフィンランドのFDPS(フィンランド糖尿病予防スタディ)で確かめられたことは、食事の改善と身体活動量を増やして減量すると、2型糖尿症の高リスクの人達でも病気を予防できたり、発症を遅らせることが出来たことです。

次なることは、どのような食事への介入がインスリン作用を強めて2型糖尿病を予防できるか?という問題でした。

米国での多人数の医療従事者を対象とした12年間の疫学研究(Health Professional Follow-up Study)で明らかになったのは、高脂肪食、特に飽和脂肪酸の多い食事が2型糖尿病の発症に結びつくことでした。ハムやソーセージ、ハンバーグなどの加工肉の摂取が多いと特に2型糖尿病のリスクが高くなります。

動物実験でも高脂肪、特に飽和脂肪酸の多い食餌を与えるとインスリン抵抗性増加(インスリン作用の低下)が確かめられました。これらの実証をふまえて米国糖尿病協会、米国心臓協会、米国農務省などで勧められているのが上記のように脂質はカロリー比30%以内、特に肉類に多い飽和脂肪酸は10%以内というガイドラインです。

ところで、いま話題の糖質オフとか糖質制限食では必然的に脂質の摂取が高まります。例えば糖質制限食ではお咎めなしの肉類はタンパク源であると同時に隠れた脂肪源でもあるのです。肉のおいしさは脂肪のおいしさです。そこで欧米では直截簡明に“healthy fats”、“unhealthy fats”という表現で油脂の選び方を一般人に啓発していますが、どうも“不健康な油”とは言い過ぎなので、ここは日本語らしく“体にいい油”、“減らしたい油”と穏やかに言い換えることにします。

日本では糖尿病の合併症として腎症や網膜炎、神経障害が常に注目されていますが、実は世界の糖尿病患者の死因のトップは脳(脳梗塞など)や心臓の大血管症によるものなのです。いずれも非糖尿病者に比べてリスクが2~4倍も高いのです。1型糖尿病でも同じです。

大血管症の危険因子は、加齢、男性であること(閉経女性は男性並み)、高血圧、脂質代謝異常(悪玉コレステロールが高く、善玉コレステロールが低い。高中性脂肪)、高血糖、肥満、喫煙などです。この脂質代謝異常には食事の脂質摂取が大きく関わりますから注意しなくてはなりません。ところが炭水化物のカーブカウントとは違って、食物の脂質の分量はとても計算できるものではありません。だから、体にいい油、減らしたい油の意味を理解して、食材や料理法を選ばなければならないのです。

次ページでは、減らしたい油、体に良い油を具体的にご紹介します。