2015年9月のオススメ展覧会・美術展(4ページ目)

ベトナム人アーティスト、アジアにおける初の大規模個展
森美術館（六本木）：ディン・Q・レ展：明日への記憶

ディン・Q・レは、現在ホーチミンで活動する芸術家。1969年にカンボジアとの国境近くに生まれたディン・Q・レは、ベトナム戦争はすでに終結していたものの、1978年、10歳のときにポル・ポト派の侵攻から逃れるため家族とともに渡米、大学で写真やメディアアートを学び、現在にいたるまで、異なる立場、価値観から生じているイメージのズレや違いと真摯に向き合い、作品にしてきました。この展覧会は、ディン・Q・レのアジアにおける初の大規模個展です。
彼が世界中から注目を集めるきっかけとなった作品「フォト・ウィービング」シリーズは、ベトナムの伝統工芸品としても知られるゴザ編み（日本ではこの手法を使ったベトナム製のプラかごが人気です）の手法から着想を得た、複数の写真を裁断して編み上げた作品。華やかなハリウッドの映画のイメージにとベトナム戦争の報道写真などが織り込まれることで、さまざまな見え方ができる作品となっています。

日本は今年で戦後70年、ベトナムではベトナム戦争終結から40年になる年です。けれども、世界中で戦争は終わらず、経済成長著しいベトナムでは、また別の問題が生まれてきてもいます。
かわいらしい人形や服なのに、よくみると胴体は1つ、頭が2つある作品はベトナム戦争時に散布された枯葉剤の影響で産まれた結合双生児をモチーフにした作品《傷ついた遺伝子》。

マーティー・シーンが出演する『地獄の黙示録』と同じくチャーリー・シーンが出演する映画『プラトーン』を編集し、似通った場面を並べた作品《父から子へ：通過儀礼》などもありますが、それらの作品を見ていくと、社会と関わり方や、歴史の中で埋もれてしまったことなど、さまざまなことを考えるきっかけとなるはずです。

■展覧会DATA
展覧会名称：ディン・Q・レ展：明日への記憶
会場：森美術館
会期：7月25日(土) ～ 10月12日(月・祝)
開館時間：10:00～22:00
※火曜日のみ17:00まで、ただし9月22日(火・祝)は22:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日：会期中無休
Web: http://www.mori.art.museum/

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