東京消防庁がまとめた資料によれば、東京都内で発生した「住宅火災」による死者数は2007年の107人をピークに、近年は減少傾向にあるようです。設置が義務付けられた「住宅用火災警報器」の効果もあるのでしょう。
しかし、それとは裏腹に高齢者(65歳以上)の死者の割合が年々増え続けており、2013年は68%に達しています。高齢化社会のなかにおける大きな問題の一つとしてよく考えなければなりません。
また、高齢者だけの世帯における死者よりも、普段は子ども世帯などと同居している高齢者が死亡する割合のほうが多い傾向もみられます。イザというときに一人だけ逃げ遅れたり、他の家族が不在のときに火災に巻き込まれたりした高齢者の例も少なからずあるのでしょう。
その一方で、若者を含めた「一人暮らし世帯」での死者も毎年、半数近くにのぼっています。住宅火災による死者の動向には、社会環境の変化による影響も大きいようです。
住宅用火災警報器の設置義務付けや建物の防火・耐火仕様など、ハード面での対策は進みつつありますが、イザというときに素早く逃げ出せるか、近隣の人が協力して救助にあたれるか、あるいは消防の人に的確な情報を与えられるか、といった問題は機械化によって解決できるものではありません。
「この時間なら、あの家にはおばあちゃんが残っているはず」のような情報は、普段からの近所付き合いによって得られるものなのです。
近隣とのお付き合い、あるいは助け合いといった面にも十分な配慮を心がけたいのですが、近所付き合いをうまく始めるためには、住宅を購入して入居するときがちょうど良い機会ではないでしょうか。
現実にはなかなか難しい面があるかもしれませんが、住宅購入の際にはしっかりと考えるようにしたいものです。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2008年10月公開の「不動産百考 vol.24」をもとに再構成したものです)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。