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J1の監督交代が少ないのは2ステージ制の影響が?

今シーズンのJ1リーグは、例年になく混戦だ。ポストシーズンのチャンピオンシップに出場する年間順位の上位争いはもちろん、J1残留を巡る争いもまったく先が見えていない。その結果として減っているのが、シーズン中の監督交代だ。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

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シーズン序盤の監督交代は吉か?

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今シーズンのJ1リーグ18チームで、最初に監督交代へ踏み切ったのはヴァンフォーレ甲府だった。第1ステージ11節を終えた5月13日、樋口靖洋監督(54歳)との契約を解除し、佐久間悟ゼネラルマネジャー(52歳)が後任に就いた。

樋口前監督指揮下のチームは、開幕から2勝9敗で最下位に低迷していた。シーズンはまだ3分の1を消化した段階だったが、負の連鎖を断ち切るための監督交代だ。これまでJ2降格を2度経験している甲府だからこその、素早い決断でもある。

シーズン序盤の監督交代で苦境から脱した例は、過去にもいくつかある。

2014年のベガルタ仙台は、リーグ戦6試合を終えた段階で監督を交代させた。グラハム・アーノルド監督(51歳)のもとで2分4敗の17位に低迷していたチームは、渡邉晋監督(41歳)とともに立て直しをはかっていく。最終的には14位となり、J2降格を免れた。

一方で、早期の監督交代が奏功しなかったケースもある。

同じく2014年のセレッソ大阪は、ランコ・ポポヴィッチ監督(49歳)を6月に解任した。しかし、後任のマルコ・ペッツァイオリ監督(46歳)の就任後も成績は上向かず、9月には1シーズンで2度目の監督交代を迫られる。同年のブラジルW杯に出場した日本代表ミッドフィールダーの山口蛍(24歳)、現役ウルグアイ代表フォワードのディエゴ・フォルラン(36歳)らを擁しながら、セレッソはJ2降格を免れることができなかった。

2013年のジュビロ磐田も、5月に監督交代へ踏み切った。後任に指名されたのは、関塚隆監督(54歳)だった。2012年のロンドン五輪でU-23日本代表を率い、世界のベスト4まで勝ち上がった実績を持つ人物である。川崎フロンターレを指揮し、J1リーグで上位争いを演じたこともある。

ところが、磐田はJ2降格の憂き目に遭ってしまうのだ。

J1に残留した2014年のベガルタと、J2へ降格した14年のセレッソ、13年の磐田との違いは何だったのか。

渡邉監督は、ヘッドコーチからの昇格だった。ペッツァイオリ監督と関塚監督は、外部からの招聘だった。

シーズン途中の監督交代だけに、状況は切迫している。個々の選手の特徴やチームの雰囲気などを、新監督は素早く把握しなければならない。その意味で、内部昇格にはメリットを見出すことができる。緊急避難の対応として悪くない。

ゼネラルマネジャーから異動した佐久間新監督のもとで、今シーズンの甲府も低迷から抜け出した。ここまで21試合を消化したJ1リーグ戦で、7勝3分11敗の勝点24で年間順位を14位としている。

ブラジル人フォワードのバレー(33歳)の移籍加入もチームの立て直しを前進させたが、佐久間監督は彼との付き合いが長い。シーズン中の監督就任も2度目だ。スムーズに仕事を進める環境が整っていることが、チームを好転させることにつながっている。


難しい判断を迫られるフロント

21節終了時の年間順位を見ると、6位の鹿島アントラーズから14位の甲府まで、実に9チームが勝点「5」差でひしめきあっている。1勝は勝点3なので、鹿島と甲府の順位が2試合で入れ替わることも数字上は可能だ。

14位の甲府と15位の松本山雅FCも、勝点差は「3」しかない。松本山雅と16位のアルビレックス新潟は「1」差で、新潟と17位のモンテディオ山形は「3」差である。山形と最下位の清水エスパルスは「2」差だ。J1残留圏内にある松本と最下位の清水も、2試合で順位が入れ替わる可能性を秘めているのだ。リーグ戦の残り13試合で、順位が大幅に変動しても驚きではない。

それだけに、各チームのフロントは難しい判断を迫られる。

J2降格圏から抜け出したいチームは、どこかで監督を代えるべきなのか。もうしばらく、静観するべきなのか。「しばらく」とは何試合なのか。残り試合の対戦相手やリーグ戦が中断するタイミングを見据えつつ、最適解を探っていかなければならない。監督交代へ動くなら、中断期間を利用したほうがベターだ。

昨年は5チームがシーズン途中で監督を代えたが、今年はここまで2チームだけである。甲府と鹿島アントラーズだ。常勝チームらしからぬ成績に甘んじている鹿島は、第2ステージ3試合を終えた時点でトニーニョ・セレーゾ監督(60歳)を解任した。

今シーズンから2ステージ制となったことで、第1ステージを不本意な成績で終えたチームも新たなモチベーションで第2ステージに臨める。下位チームへ向けられるフロントやサポーターの視線にも、「ここから巻き返しをはかってほしい」との希望的観測が混ざる。

ここまでのところ監督交代が2チームに止まっているのは、少ない勝点差で競り合っていることに加え、2ステージ制となったことで生まれた”猶予期間”も理由にあげられるだろう。もちろん、監督の仕事ぶりがフロントを納得させているところもあるはずだ。

新戦力の補強によって、順位アップの活路を見出すこともできる。ただし、選手を補強できる期間は決まっている。締め切りは8月7日だ。

J2降格の危機に瀕する清水は、かつて川崎で活躍した鄭大世(31歳)を得点源として補強した。J1残留にかかる出費とJ2降格で被る収入減を量りにかけて、各クラブは監督人事や補強を検討しているに違いない。1試合ごとに変わる順位の裏側で、フロントも格闘している。
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