隣地との間にある塀やフェンスにも一定の注意が必要
敷地境界線上なのか、それともどちらかの敷地内なのか、さらにその維持管理や補修の費用負担はどうなるのか……。ときには塀などの越境問題を抱えていることもあります。
塀やフェンスなど「囲障(障壁)」の設置場所や費用負担についての基本的な考え方や、住宅売買における注意点などを確認しておくことにしましょう。
塀やフェンスなどの新設について、法律ではどのようになっているのか
隣地との間に設置する塀などについては、民法第225条から第228条に規定されています。「2棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる」としており、これを「囲障設置権」といいます。
囲障設置権は居住者の生活におけるプライバシー(平穏)を保護するために設けられたものであり、建物の所有者に認められた権利です。したがって、借地における土地所有者(地主)などには法律上の規定がないことに注意が必要です。
また、2棟の建物所有者間における問題であるため、隣地が空き地や青空駐車場、資材置き場などの場合も適用がありません。
「2棟の建物の間に空地があれば囲障を設置できる」とはいえ、当然ながら勝手に設置することはできません。法律で認められるのは「境界線上に塀やフェンス、垣根などを設置するよう隣人に協力を請求できる」ことにとどまります。
そしてお互いの協議がととのえば、「両者で半分ずつ負担して設置、保存をする」というのが法律上の原則となります。ただし、一方が高価で見栄えのする塀を望み、相手が安価な塀を主張するような場合には、その費用負担割合を話し合いで決めることになるでしょう。
それに対して、双方の協議がととのわない場合には「板塀または竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ2メートルのものでなければならない」と定められています。
しかし、これは民法が制定された時代に一般的なものを想定しており、現代では他の材料、異なる高さによる塀やフェンスのほうが適切な場合も少なくありません。
また、「高さ2メートルの板塀や竹垣」とは異なる慣習がある地域、あるいは他の法律や条例による規定がある場合にはそちらに従うことになります。
さらに、いくら民法に定められているからといって「高さ2メートルの板塀や竹垣」を勝手に設置することが認められるわけではなく、相手方が協力しなかったり話し合いに応じなかったりするときには、裁判の手続きが必要になるでしょう。
なお、自分の敷地内に塀やフェンスなどを設置することは原則として自由であり、隣家所有者の承諾を得る必要もありません。この場合には当然ながら、設置費用、維持管理費用とも全額自己負担となります。
隣地との間に既存の塀などがある住宅を購入するときの確認ポイント
敷地境界線上に均等に立てられた塀なら、問題が起きることは少ない
敷地境界線上に均等に立てられた塀などであれば、今後の維持管理費用や補修費用も隣家所有者と同額ずつ負担していくものと理解して構わないでしょう。
ただし、一般的なものよりも高価な塀、特殊な塀などであれば、どちらかが多く負担する取り決めとなっている可能性もあるため、しっかりと確認しなければなりません。
また、全体がどちらか片方の敷地内に立てられた塀やフェンスなどのときには、その状態に十分な注意が必要です。
自分が購入しようとする敷地内に塀やフェンスがあれば、すべて自分の費用負担で管理していかなければなりません。
その一方で、たとえば隣家の敷地内に立てられた塀が崩れそうなとき、あるいはあまりにも見栄えが悪いときでも、これを勝手に直すことはできず、あくまでも隣家所有者の対応を待たなければならないのです。
そして越境の問題です。塀などの大半がどちらかの敷地内にあるものの、一部だけが敷地境界線を越えているようなことも少なくありません。その事実が売買前から認識されていたケースばかりでなく、売買に伴う敷地測量や境界確定によって初めて判明するケースもあるでしょう。
このような場合には、その維持管理費用や補修費用の負担がどうなっているのか、あるいはこれからどうするのか、隣家所有者との間で明確に取り決めておかなければなりません。将来的に塀などを造り直すときにどうするのか、覚書などを交わしておくことが必要な場合もあります。
隣地との間を生け垣や植栽にする場合はお互いの理解も必要
さらに、これから先お互いに所有者が変わっても、その合意内容が引き継がれるようにしなければなりません。
なお、最近は塀やフェンスではなく、隣地との間を生け垣や植栽にしていることもあります。見た目も雰囲気も優れたものですが、その維持管理には相応の費用と手間がかかるでしょう。
とくに落葉の時期など、お互いが協力して清掃に努めることも欠かせません。このような場合の隣人関係についても、売買契約の前にしっかりと売主から聞き取ることが大切です。
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