モダンな高性能の乗り味が楽しいと思えるかどうか
コンパクトな室内に立派なバケットシートの組み合わせは、乗る者の気分を自然と昂揚させる。筆者も箱根のパーキングで乗り込んだ瞬間に、どきどきと心ときめいた。過去のJCWのパフォーマンスも、自然と頭のなかに蘇ってくる。
もっとも、ゆっくりと走り出して、ウォームアップ程度に箱根のワインディングロードを流しはじめてみれば、まずはその上質な乗り味に驚かされることだろう。スパルタン一辺倒の走りを期待する向きは、この時点で少なからず拍子抜けするに違いない。アシの動きには、ぎっしりと身の詰まったような弾性感があって、硬いといえば硬い部類に入るわけだけれども、決して内臓をゆさぶるような不快なハードさではなかった。
徐々に速度をあげていく。タイヤとシャシー、そしてボディの一体感がぐんぐんと増していく。それでいて、居心地の悪くなるようなハードなライド感とは、一切無縁。ハンドリングは正確かつシャープで、意のまま感にも充ちていた。
パワフルな加速は確かにミニ最速。だが、そう信じるに値するほどの過激さは、面白いことに、ドライバーへさほど伝わってこない。そのうえ、ブレーキフィールも素晴らしく、正確なハンドリングでコーナーを駆けぬけた、となれば、高性能モデルとしての完成度がものすごく高くなったと評価するしかない反面、以前のJCWモデルのような、ある種の危なっかしさ、スリリングなライドフィールなどが恋しくなってしまうから、人間はわがままなものだ。
それはいかにも21世紀型、最新テイストのファントゥドライブだ。やたらめっぽう速いのだが、誰もが安心して到達できる速さでもある。限界に至るプロセスを大事にしてきた昔気質のクルマ運転好きには、かえって物足りないと感じられることだろう。
そんなキャラクターの高性能ミニをJCWと呼ぶことに賛成か否か。それによって、最新ミニのJCWに対する評価も変わってくることだろう。ハイエンドブランド、たとえばBMWのMやメルセデスのAMGの、小型版のようなモダンな高性能の乗り味が楽しいと思えるかどうか。ミニJCWの評価の分かれ目は、正にその一点にこそあった。
個人的には、絶対性能には満足するも、できればその乗り味や操作感はミニクーパーSの延長線上にあるではなく、そのベクトルからもう少し外れた、スパルタンな味わいやスリリングな走りを実現して欲しかった。そうすれば、JCWとして、このプライスをミニに支払うことにも躊躇わないと思う。