小中学校跡を開発したユニークな分譲住宅地
取材したのは、埼玉県を中心に住宅供給を行うポラスグループの関連会社「中央住宅」が開発している「オランジェ新松戸」(全38区画)という分譲住宅地。ユニークなのは小学校跡地を活用したという点です。実はすぐ側に中学校跡地もあるのですが、そこでも同様の開発が進行中です。
近年、統廃合による学校跡地の活用は全国的な課題となっているそう。松戸市は、小学校跡地では「若い世代を呼び込む機能」、中学校跡地では「定住したくなる機能」を跡地に持たせることを決定したといいます。
それを実現するため、単に土地を売却して開発するのではなく、公募を行いそれらの機能を持った住宅開発を提案した中央住宅が選定されたという経緯があったそうです。
学校跡地を分譲住宅地として再開発する事例はあまり耳にしませんが、同社では埼玉県春日部市で実績があるとのことです。このような背景があることから、次のような開発には次のコンセプトが盛り込まれています。
- コミュニティの形成
- 街づくりのためのルール設定
- 子育て応援のための住宅設計
行われたイベントはネイチャーゲーム。分譲地内に植樹された数十種類の樹木の樹種を当てるビンゴ大会やガーデニング講座が行われ、多くの住民の方々が参加されていました。
このような分譲住宅地を購入し住み始める場合、当初は見知らぬ家族ばかりが集まるわけですから、住民同士がお互いに面識を持つ機会があったらいいはず。それを開発業者が仲立ちとなり、このようなイベントを行っているわけです。
実際、ビンゴゲームでは住民の皆さんがいくつかのグループになり、それぞれの家族の自己紹介をしながらゲームを楽しんでいましたから、よい顔合わせの機会になっていたように感じられました。
緑の維持管理を通じてコミュニティを形成
中央住宅では、約2年間にわたり花壇の作り方や樹木の剪定方法、クリスマスや正月のかがりの作り方などのワークショップを開催し、分譲地内の「絆づくり」をサポートするとのことです。これは、分譲住宅を「売って終わり」ではなく、長く住民の方々の暮らしに関わり続けますよ、という事業者の意思の表れです。中央住宅だけでなく、良質な分譲住宅地では近年、このような取り組みがよく行われています。
注目すべきはコミュニティ形成に「緑(樹木)」を役立てていること。分譲地内にある街路樹などは住民の皆さんの共有のものとされ、それをみんなで維持管理していくということがルールとして定められています。
緑を媒介としてコミュニティ内の意思疎通が図られることにより、単に分譲地内が美しくなるだけでなく、例えば災害に強い街、セキュリティに優れた街になるといった副次的な効果も期待されます。
ルールは緑に関してだけではありません。「景観協定」というものも設定されています。これは、統一感のある景観の保全するために定められるもので、これに賛同しないとこの分譲地の住宅を購入できないというものです。
小中学校跡地という市の資産を活用した事業であるため、このようなルールがあるのです。ちなみに景観協定を設定した分譲住宅地は松戸市では初の事例といいます。
次のページでは、この分譲住宅地における景観協定の具体的な事例を紹介することから話を展開していきます。