暮らしの法律/雇用問題

契約社員が突然、契約を打ち切られたら?

契約社員が、契約を打ち切られることを雇い止めといいます。雇い止めが許されるかどうかについて、法律ではどうなっているのか見てみましょう。

酒井 将

執筆者:酒井 将

暮らしの法律ガイド

今回は契約社員の雇い止めのケースです。

何度も契約更新していたのに、突然打ち切りになった場合

見に覚えのない理由で雇い止めを受けたら?

見に覚えのない理由で雇い止めを受けたら?

私は、会社に契約社員として採用され、当初その雇用期間は6か月とされていましたが、これまでにも数回契約が更新され、他の正社員と同じように仕事をしてきました。

ある日、上司に命じられた仕事をする中で、コンプライアンス違反が行われていることに気づいたので、部内の業務改善の会議で上司に改善点として指摘しました。すると、その後上司から嫌われるようになり、今回の雇用期間満了とともに雇用を打ち切ることになったと上司から言われました。

上司に理由を聞いても、身に覚えのないことを自分のミスとして言われるだけで、それ以上何も答えようとしてくれません。このような急な雇い止めに納得がいきません。

雇い止めは会社の自由か?

ご相談者は、6か月間の雇用期間で契約社員として働いてきたということですが、このような契約は有期雇用契約として法律上認められています。そうすると、会社が契約を更新しない限り、雇用期間の満了とともに契約は終了することになりそうですが、雇い止めが自由に認められるわけではありません。

特に契約社員であっても、それまでに何度も契約を更新してきた人や、会社から更新を期待させるような説明を受けていた人は、継続して仕事をする予定で人生計画を立てているでしょうから、そのような継続雇用への合理的期待をもってしかるべき場合については、雇い止めは正社員に対する解雇と同じように法的な規制が及びます。厳密にこの雇用継続への期待が保護される場合にあたるのかどうかについては、裁判では更新の回数や勤務期間の他に、会社の業務の性格や内容、使用者側の言動などから総合的に判断されるといわれています。

質問者のケースでも、これまで数回契約が更新されてきたということですので、雇用継続への期待が保護される可能性があります。
 

解雇法理(かいこほうり)が適用される可能性も

ところで、雇用期間の定めのない正社員の人の地位は法律上保護されて、そのような人を合理的な理由もなく解雇することは、権利濫用として認められません(解雇法理)。そして、雇用期間の定めのある契約社員の人でも、雇用継続への期待が認められる場合には、同じように、雇い止めをすることは認められません。

質問者のケースで、解雇法理の適用があるとすれば、雇い止めの理由として言われたミスが身に覚えのないもので、事実ではないのなら、合理的な理由もありませんから、雇い止めは法律上認められません。会社のコンプライアンス違反を会議で指摘したことが、解雇や雇い止めの理由とならないことは、言うまでもありません。

また、仮に質問者のミスが事実だったとしても、会社のコンプライアンス違反を指摘したことが雇い止めの主要な動機となっているのであれば、やはり合理的で社会通念上相当であるとはいえず、雇い止めは権利濫用となるでしょう。
 

雇い止めが無効な場合、その後どうなるか

雇い止めが無効とされる場合、雇用期間満了後の法律関係は、従来の雇用契約が更新されたと同様の扱いになり、その雇用は法律上保護されます。したがって、会社に対して、職場復帰することを求めたり、未払いの給料があればそれを請求することもできることになります。

もっとも、気に入らない従業員をクビにして、コンプライアンス違反を継続するような会社なのであれば、そのような会社に戻るのが、その人にとって本当に幸せなのかという別の問題もあるでしょう。その場合は、職場復帰は求めず、損害賠償請求だけをすることになります。
 

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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