阪神淡路大震災以降に発達した住まいの地震対策
まず、地震対策の進化について簡単に振り返っておきましょう。阪神・淡路大震災以降、住宅の地震対策は大きく進化しました。最初に耐震構造が積極的に取り入れられるようになりました。中でも、特に木造住宅(軸組工法の住宅)では集成材や耐震金物の採用が一般化し、これにより木造の耐震性は、鉄骨造などと比べ遜色のないレベルに高まったとされます。
その後、東日本大震災に至るまでにいくつかの地震対策の進化がみられるようになりました。「免震」や「制震」技術の登場です。免震は建物本体と基礎の間に装置を設け、建物に地震の揺れを伝えにくくする技術です。
制震は、耐力壁に地震の揺れのエネルギーを吸収する装置を組み込むもの。建物そのものは大きく揺れますが、建物の変形を小さくできるため、被害を抑えられるのが特徴です。
免震技術は導入コストが大きいのでそれほど多くは普及していませんが、制震技術の方は導入コストが小さくてすむため、木や鉄など構造材を問わず、近年では広く導入が進められるようになってきました。
このほかにも地震対策が様々なカタチで取り入れられるようになりました。その一つが火災への備え。外壁など外装材の性能が高まり、これにより木造住宅でも鉄骨系住宅と同様の耐火評価をうけられるようになりました。
これは、阪神・淡路大震災で木造住宅が地震の揺れには耐えたものの、火災で大きな被害を受けたことの教訓によるものです。このほか、「飛散防止」対策もずいぶん進んできました。
これは地震の大きな揺れで家具やドアなどが倒れたり、大きく動かないように固定化するなどの方法です。建物が全壊、半壊しないようにするだけでなく、スムーズに避難したりできるようにする配慮です。
東日本大震災で露見した地震対策の課題とは?
さらに収納の工夫などにより、防災グッズや備蓄食糧などを手に取りやすい場所に保管する提案なども、阪神淡路大震災、さらには東日本大震災以降に積極的に提案されるようになってきました。ところで、2015年4月25日にネパールで大きな地震が発生。ネパールだけで死者8000人超、負傷者14000人超となっているそうです。世界各国の支援が入っていますが、まだ混乱が続いていおり、何とも痛ましい状況です。
私は17年ほど前にネパールを訪れたことがありますが、現地の建物は多くがレンガ造り。混乱が続いているおり、正確な数はわからないようですが、大変多くの建物が全半壊しており、そのため現地の方々はテント暮らしなどを余儀なくされているようです。
なぜ、ネパール大地震の話題を持ち出したかというと、大地震が発生すると正確な情報を把握しづらい事態が必ず起こるからです。思い出して下さい。東日本大震災の際、日本でも同様でした。
東日本大震災の場合は大津波による被害が多かったという特殊事情がありましたが、とはいえそれを差し引いても被災地の状況把握にはかなりの時間を要しました。
私はハウスメーカーなどの取材をしていますが、彼らは東日本大震災の際に被害状況の把握に苦労していました。数日間にわたり通信網が寸断され、交通手段も限られていたためです。津波の被害があった場所も含め、自分たちが供給した建物の被害状況をある程度正確に確認するために、発生から1ヵ月ほどの時間を要しています。
大災害では被災地支援のかたわらで被害状況の確認が必要になりますが、できれば後者については早く済ませられればより良いわけです。次のページでは、そのための新たな技術開発について紹介していきます。