老け見え・若見え……見た目年齢と実年齢に差が出るのはなぜ?
「見た目年齢」に差があるのは「細胞の老化度合い」がもたらしていると考えられる
同窓会などに参加すると、同い年なのに、まだ若々しく見える人と、年齢よりも老けて見える人がいると思います。年齢を重ねていく中で、いわゆる「見た目年齢」の差が開いていくのはなぜなのか。この違いは「細胞の老化度合い」がもたらしていると考えられます。では細胞老化スピードの差はどのようにして出てくるのでしょうか?
若さと長寿の秘訣は「細胞分裂のスピードを落とすこと」?
細胞は常に新陳代謝を行っており、あたらしい細胞と入れ替わっています。細胞をつくるための設計図は遺伝子。これはみなさんご承知の通りです。「太っているのは遺伝だった!? 肥満遺伝子ダイエット」で詳しく解説しましたが、ヒトの遺伝子は父親から1本、母親から1本を受け継いだ2本で一対になっています。ヒトの遺伝子はひも状であることから、「端っこ」があるわけです。
遺伝子は体や性格をつくるためのデータが記載されています。このデータが一部でも失われることは大問題。そのため、端までデータを失わないために、もしくは端のデータを失っても問題が起こらないように、両端に何も書かれていない部分が存在します。この部分を「テロメア」といいます。「テロメア」は昔のカセットテープの「リード部分」とか、靴ひもの先端の硬いところと説明されることもあります。なくても困らないようでいて、ないと困る部分です。
その証拠に、この「テロメア」は単なる端っことしての役割だけでなく、体細胞が分裂した回数をカウントする役割をしています。言ってみれば「寿命の回数券」です。この回数券が尽きると、細胞は分裂できなくなり死を迎えるのです。
ここでのポイントは「回数券」であるということ。すなわち、細胞分裂の「回数」は決まっていますが、次の分裂までの「間隔」は決まっていないのです。1回の分裂でできた細胞は、長く使うことができても、短期間しか使えなくても、1回は1回として数えられるのです。
つまり、次の分裂が遅くなればなるほど、若い状態を保つことができますし、長寿にもなるということです。
「食べ過ぎは老ける」は本当か……老けない人の食べ方のヒント
J. Colman , M. Anderson , C. Johnson et al.: Caloric Restriction Delays Disease Onset and Mortality in Rhesus Monkeys, Science 325 , 201-204 , 2009
実は、理由は単純なこと。片方には好きなだけえさを与え、もう一方にはエネルギー制限したえさをコンスタントに与え続けます。そして2匹が27.6歳になったときの写真がこれ。サルは1年で人間でいう3歳程度、歳をとると考えればよいので、サルの27.6歳というと、人間では大体83歳くらいだと考えればいいと思います。
どちらがどちらかは、もうお分かりですね。AとBは好きなだけえさを食べたサル、CとDが食事制限をしたサルです。この写真から「食べすぎ」が老化を早めてしまうことがお分かりいただけますね。
年齢より若く見られるために、老けない食べ方のコツ
「遺伝子は変えられないんだから、細胞分裂のタイミングだってどうせ変えられない」と思っている方もいるかもしれません。しかし、ちょっと待ってください。遺伝子は変えられませんが、細胞分裂のスピードは変えることができます。どのようにするかはこのサルたちが教えてくれています。昔からよく言う「腹八分目」。これが若々しさを保つ極意なのです。
食事内容としては、全粒粉の穀類・野菜・果物・豆類などの植物性食品を積極的にとる、脂肪の多い動物性食品や精製された炭水化物をひかえめにする、加工食品はひかえるなど、かさはあってもエネルギー量の少ない食品を選ぶと腹八分目を続けることができます。
活性酸素をためないように、抗酸化作用のあるビタミンCなどをとる方法もあります。さらに、時間栄養学の考え方を使って、夜中に食べないようにする、早めに満腹感を得られるようによく噛んで食べるなど、食事ひとつをとってみても、細胞分裂を遅らせる方法はたくさんあります。
食事は毎日のことなのでおろそかにしてしまいがちです。たしかに、日々の食事の影響はほんとうに小さなものですが、継続は力なり。長い時間を経た後に、大きな差を生むのです。
他にもテロメアを守るためには、ウオーキング等の運動をしたり、ストレスをためないよう早めに発散したりすることも有効です。「健康的な生活」こそが、いつまでも若々しくいられるためのポイントです。