野菜ジュースは体にいい?悪い? 野菜の栄養素は摂れるのか
野菜は野菜ジュースで置き換え可能でしょうか? それを考えるために、まずは「野菜」に含まれている栄養素が何かをおさらいしてみましょう。実は野菜には、炭水化物やたんぱく質、脂質といったエネルギーを作り出すことのできる栄養素は多くは含まれていません。そのかわり、エネルギーを作り出すときの潤滑油となる「ビタミン」と「食物繊維」が多く含まれています。
食物繊維は植物自身の茎や葉などを支える骨のような役割のものですが、かさがあって食べ応えがある一方で、エネルギー源となる栄養素の含有率が低いのが魅力。野菜が「低エネルギーで、たくさん食べても太りにくい」と健康的なものだと捉えられているのはそのためです。
<目次>
野菜と野菜ジュースの違い……ビタミン・食物繊維の含有量に差
野菜の栄養としては、「ビタミン」と「食物繊維」が非常に大切であることは、上記で説明したとおり。では次に、野菜ジュースの作り方を考えてみましょう。ただ野菜をミキサーで粉砕しただけでは、液体の中に食物繊維が残り、口当たりの悪いジュースになってしまいます。自宅でミキサーで作る野菜ジュースなら、口当たりが多少悪くても、そのまま食物繊維も摂れるのですが、製品化されている野菜ジュースは、濾したり絞ったりして滑らかな飲み心地にされており、さらによりおいしく感じるように砂糖や果汁などで味も整えられています。
この工程で「ビタミン」と「食物繊維」がどうなるのかがポイントです。ビタミンは大きく「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」に分けられます。前者はジュースの中に溶け出すので、野菜ジュースでも問題なく摂取できると思われるかもしれません。しかし、実は水溶性ビタミンは酸素・光・熱によって分解されやすいのです。野菜をカットした時点で分解が始まるのに、ジュースにするためにミキサーで粉砕し、絞り、味を整え……という工程を経る中で、元々持っていたビタミンもかなりの量が分解してしまうと考えられます。また、ビタミンだけでなく、食物繊維に関しても「水溶性食物繊維」と「水不溶性食物繊維」があります。後者は搾りかすとして廃棄されてしまうため、製品の中には含まれていません。
これらの2点が野菜と野菜ジュースを分ける最大のポイントとなります。
『食事バランスガイド』の野菜ジュースの扱い・その背景
一方で、農林水産省から出されている『食事バランスガイド』では「野菜ジュース」と「果実100%のジュース」は、200ml=1SV(1つ)を副菜(野菜・きのこ・いも・海藻料理)として計算してよいことになっています。上記の通り、食物繊維やビタミンがあまり残っていない状態でなぜ1SVでカウントできるのか、不思議に思われる方もいるでしょう。この背景には、忙しい現代人は野菜不足になりやすいため、せめて手軽に持ち運びできるパック入りの野菜ジュースでもよいので飲んでほしい、という意図があります。確かに、全く摂れないよりは、よいのかもしれません。もしどうしても野菜代わりに野菜ジュースを選ぶ必要がある場合は、食塩や果物、砂糖などをなるべく添加していない商品を選びましょう。
野菜ジュースは体に悪い? 健康的に飲むための注意点・ポイント
特にメタボリックシンドロームが気になる方や、ダイエットしたい方、また糖尿病患者さんに対しては、野菜代わりとして野菜ジュースはおすすめできません。というのも、上に挙げた理由以外にも、食事量を変えずにエネルギーカットを叶えてくれる「水不溶性食物繊維」が、野菜ジュースでは摂ることができないからです。食物繊維は固さがあるのでよく噛む必要があります。これによって脳が「食べ物を食べた」としっかり認識でき、満腹感が生まれます。さらに血糖値の上昇を緩やかにするため、糖尿病のリスクが下がり、将来的に健康維持・増進をすることができます。野菜ジュースは噛む必要がないので、手軽な反面、あまり満足感を得ることができませんし、血糖値などへの効果もあまり見込めません。
また、「のどが渇いたときに水を飲むのではなく、野菜ジュースを飲んだ方が健康的ですよね?」という質問もよくいただくので、答えを書き添えます。もちろん、砂糖などの多く入った清涼飲料水や果汁の少ないジュース、コーラなどに比べれば、野菜ジュースの方がまだ健康によいかもしれません。しかし、お茶や、砂糖・ミルクを入れないコーヒー、紅茶のほうがオススメです。野菜ジュースといっても、やはりジュースはジュースだからです。『食事バランスガイド』で副菜として数えていいということは、エネルギーはある、ということでもあります。
このように「野菜」と「野菜ジュース」は似て非なるもの。可能な限り本来の「野菜」を選んでしっかり食べるようにすることが大切。「野菜ジュース」はどうしても野菜不足になってしまうときの奥の手として考えるのがよいと思います。