男女間の憎悪は特別なものなのか?
ニュースになった、妻の遺骨をスーパーのトイレに流した男性は、自ら骨壺を持って出頭した。報道を見て、「自分のしたことの重大さに気づいたき、いろいろな方に迷惑をかけて申し訳ない」と反省しているという。常識的に生きてきた、まじめな男性なのかもしれない。ずっと我慢しつづけてきて、骨壺を見ているうちに、妻への憎悪が増幅されていったのだろうか。憎悪の感情とどう付きあう?
「憎悪」とは、自分の存在や尊厳を傷つけられたことによって、相手の存在さえも憎むようになること。それゆえ、なんとか復讐してやりたいと考えるようになるのだろう。
つまり、深く関わった相手だからこそ、憎悪が生まれるのだ。男女間で憎悪の感情が生まれやすいのは理解できなくはない。ストーカーやリベンジポルノなどにも、一部あてはまるのではないだろうか。
「私も復讐の念にとりつかれたことがあります」
ハルコさん(仮名=35歳)は、自嘲的な笑みを浮かべながらそう言った。26歳のときから4年間つきあい、結婚を約束していた彼が、他の女性に走ったときのこと。ある日突然、連絡がとれなくなった彼につきあっている女性がいると知らせてくれたのは、共通の友人だった。
「ああいうときって自分の身を捨てても、相手を困らせてやりたいと思うものなんです。私は彼の会社宛てにメールをしました。つきあっているときに私が中絶したこと、結婚は口約束だから法的効力がないのはわかっているが、彼の上司にも紹介されたことがあること、4年もつきあった私に、彼は別れ話ひとつきちんとできずに逃げ回っていること。全部書きました」
それをきっかけに、前に会ったことのある彼の上司が連絡をくれた。会社でも問題になっている。彼をしばらく転勤させる案が浮上している、とのことだった。
「彼は同期の中でもエリートでしたから、私の告白によっておそらくエリートコースからははずれたと思う。それでも当時はすっきりとはしなかったけど……」
もっとひどいことをしてやればよかったとも思ったらしい。だがあれから5年たって、今は「そこまでしなくてもよかったのかもしれない」という気持ちも出てきたようだ。
「突き動かされるような憎しみの感情で行動してしまった。でも、人を強く憎んだ分、あとから自分自身も落ち込みが激しくなって……。本当はどうしたらよかったのか、いまだに考えることがあります」
自分を突き動かす憎悪の感情。そうなったとき、どれだけその感情に流されずに踏みとどまれるか。そこで、ある意味、人としての力が試されるのかもしれない。
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