2ドアクーペの頂点に立つ1台
18年ぶりに名称を復活させたフラッグシップ。日本ではベーシックなS550 4マチック(1724万円 写真)、ハイパフォーマンスモデルAMGのS63 4マチック(2448万円)とS65(3182万円)をラインナップする
なんという存在感、強さ、逞しさ、美しさ、だろう。日本じゃ見向かれなくなって久しい2ドアクーペも、欧米では未だに“セダン”がスタンダードの一角にあるためか、エレガントなスタイルのクーペモデルはしっかりと、見向かれている。その頂点に立つ一台、それがコレ。
名前を、Sクラスクーペとした。クルマ好き、ベンツ好きには、“前でいうCL”というと、分かりやすいだろう。メルセデスは今、ニッチや派生によるラインナップ拡大に伴って、ぐちゃぐちゃになりつつあったネーミングのロジックを再構築中で、できるだけシンプルに名付けようとしている。
もっとも、Sクラスクーペという名前は以前にも使っていた。W140型の時代、それまでSECと呼ばれていたクーペ(C140)を、いったんSクラスクーペとしたこともあったのだ。その後、CLクラスとして独立するわけだが、140、220、221、222のS4世代を経て、再び昔の呼び方に戻ったということになる。
メルセデスの乗用車ラインナップにおいて、トップエンドとなるSクラスの、さらにまた贅沢な2ドアクーペというだけあって、ナカミの話題は尽きない。乗用車最高峰のSクラスサルーン以上の最新技術がこってり盛り込まれた。
安全快適技術の充実で、世界トップレベルを快走するメルセデスにあって、Sクラスのそれは文字どおりフラッグシップ装備なわけだが、クーペの内容はそれを踏まえつつ、さらに新機能を盛り込んだもの。たとえば、2WDモデルに用意された「カーブチルト」機能(ダイナミックカーブ機能)は、コーナリング中にクルマが内側に傾く(通常は外側に踏ん張る)というもので、ベテランドライバーほど最初は違和感バリバリだろうけれども、何度か経験していくうちにより速く安定して曲がっていけるという仕組みの虜になってしまうことだろう!
もっとも今、日本仕様で2WDといえばトップエンドのメルセデスAMG S65クーペしかない。乗り出し3500万円以上というから、いったいぜんたい誰がどんな気持ちでスーパーカーのような値段の2ドアベンツを買うのだろう、と唸ってみるほかにできることなどないわけが、幸運にも週末に借り出し、往復200kmのドライブ試乗が叶った。