資産運用/投資初心者にもできるカンタン資産運用法

40代からの資産運用は、積み立て投資をベースに

新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け株式相場は乱高下し、その後、株高の局面に。こうした状況を見ると、「いまから投資をしても大丈夫?」と思ってしまう人も少なくありません。また、資産運用をしてこなかった人は、「株価がどうなろうと自分には関係ない」と、この状況に無関心かもしれません。しかし、40代なら、老後資金を準備するためには、資産運用を今からやっておくべきです。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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40代でも遅くない。今から老後のお金を運用する

具体的な資産運用の話に入る前に、日経平均株価の推移を簡単におさらいしてみましょう。

今から約30年前。日本はバブル景気に沸いていました。株価は1989年(平成元年)12月29日の大納会には、史上最高値3万8957円をつけ、多くの人がこのまま景気が続くと思っていました。しかし、1991年にバブルははじけ、株価は急落。不動産の負債は莫大な額となりました。その後、株価は上下するものの、景気が回復したと思うと大きな出来事が発生し、そのたびに株価は影響を受け、長らく下落基調が続きました。

 
40代が老後資金を準備するためには?

40代が老後資金を準備するためには?

2000年、2001年ごろに、いわゆるITバブルがあり、株価は上昇したものの、やはりバブルははじけてしまいます。さらに2001年9月に米国同時多発テロによって世界経済は大打撃を受け、ついに日経平均株価は、8000円割れになるまでとなりました。ここが、この30年の中での大底になるわけです。

ここから、株価は持ち直すものの、2008年のリーマンショックで再び急落。追い打ちをかけるように東日本大震災で被災した日本は、株価低迷から抜け出せない時代が長く続きました。

株価は日々変動しますが、景気がいい時は、株価はずっと上昇すると思いますし、株価1万円割れの時代が長く続くと、このまま日本経済は回復しないのでは、と思ってしまいます。でも、いい時も悪い時も一本調子では続かないものです。30年ぐらい遡ってみると、そのことが見てとれるでしょう。

ここ6、7年は、日銀の異次元金融緩和により株価は上昇。2018年に2万4000円を超えたものの、2019年1月には、米国利上げにより世界同時株安となり、日経平均は2万円台を割り込みました。その後は、再び、株価は上昇傾向になり、ここ数年は2万円台前半で推移していました。
 
その状況が一変したのが、2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の影響です。感染症拡大傾向が強まり、3月13日には、新型コロナウイルス感染症対策の特別措置法が成立し、3月19日には日経平均株価は1万6358円と年初来安値をつけました。その後、ワクチン開発や米国大統領選の結果を受け、株価は急上昇。

2021年に入っても株高の傾向が続き、2月16日には30年半ぶりに3万円台を回復し、3万714円の高値をつけました。
日経平均株価の推移と大きな出来事

日経平均株価の推移と大きな出来事

この状況を見て、今がピークで、あとは下落するのではと、投資に尻込みするのは、早計です。今から投資をしてもソンするだけだ、と考えるのは、短期的な売買で利益を得ようとするからです。今ヘタに手を出して、高値づかみをしたくない。どんな銘柄でも、もう買うタイミングはやってこない。そんなふうに思ってしまうのでしょう。

しかし、資産運用は長期で考えるものです。短期の売買を繰り返すのではなく、20年、30年のスパンで考えれば、いい時もあれば、悪い時もあります。もちろん、同じ銘柄をずっと持ち続けることが長期投資ではありません。20年、30年という長い時間があれば、利益を出す機会は多いということなのです。
 

積立投資は長期の資産運用に欠かせないツール

今、30代なら、これから老後資金のために資産運用を始めても30年もの期間があります。40代であっても20年もあるのです。ここまでの株価上昇の波に乗れなかったからといって、資産運用をあきらめるべきではありません。

最近は、株の配当が高い銘柄、株主優待の銘柄に人気が集まっているようです。確かに、最近の傾向として、株主重視、配当性向を高める、自社株買いなど株主還元のニュースによって、人気が集中する銘柄もあります。また、いわゆる出遅れ銘柄に投資をして、少しでも利ざやを稼ごうという向きもあるでしょう。しかし、これまで資産運用をしてこなかった人は、何をするにしてもイチから銘柄探しをしなくてはなりません。

では、これから始めようという人は、どんな投資を心がけたらいいのでしょう。

これまでの株価推移を見ると、かなり高くなっているんじゃないかと思うでしょう。これから多額の資金を投入するのには、勇気がいるでしょう。そもそも、これからどういう方向性なのか誰も明確に答えられない相場に、一度に多額の資金をつぎ込むのは得策ではありません。長期で結果を出すのが目的なのですから、価格変動のリスクを抑えられる「ドルコスト平均法」のシステムを使った「積立投資」に改めて目を向けるべきでしょう。

ドルコスト平均法は、毎月一定額を投資し、価格が高い時は、少しの口数を買い付け、価格が安い時は多くの口数を買い付けるシステムです。結果的には、1口あたりの購入単価を平準化できるので、価格変動がある投資商品を長期で積立購入する際に、リスクを減らすために有効な手段となっています。

積立投資の代表が「投資信託」で、毎月一定額で指定した投資信託を買い付けていきます。1つの銘柄に投資する株式投資とは異なり、投資先は多岐にわたります。たとえば、世界中が投資対象の投資信託なら、日本株はもとより、米国、欧州、新興国の株、国債などの債券、不動産や貴金属なども投資対象になります。もちろん日本株だけという投資信託も多くあります。日本株のなかでも、その時のブームにのった投資先ではなく、業種などバランスよく投資先を選んでいるものが、結果的には、よい成績を残しています。

投資は、いつ何が起きるかわかりません。これまで成績がよかったからといって、日本株だけに投資するのではなく、ほかの国々や株以外のものにも投資しておけば、日本株が不調になっても他でカバーできるのです。特にこれから20年、30年先を考えて資産運用をするのなら、こうしたリスクの分散も考えておきたいものです。

毎月1000円程度から投資することが可能なので、毎月1万円投資できるのであれば、複数の投資信託を選んでリスクを抑える方法も有効です。さらに、個人型確定拠出年金(通称:iDeCo(イデコ))を利用した積み立て投資であれば、運用中、売却時の利益は非課税なので、一般の証券口座などで運用するよりも、有利になります。こうした税の優遇制度の整備が進んでいることも、知っておきましょう。
 

株価指数に連動するETFなら銘柄選びもラク

もうひとつ、投資信託ではあるものの、日経平均株価やTOPIXの値動きに連動するように運用されているETF(上場投資信託)を定期的に買い付けていく、という方法もあります。

ETFは日本の株価指標だけではなく、世界中のさまざまな指標に連動するものがあります。少額で買付ができるので、たとえば月3万円程度をETFの購入資金に充てられるなら、1万円は日経平均に連動するETF、2万円は米国株式に連動するETFというように分散することが大事です(ETFは銘柄によって価格や購入単位が異なるので、キリのいい数字にはなりませんが)。投資信託ほどではありませんが、ETFは銘柄数が多くあります。まずはどの株価指数に連動するETFにするかを決めて、絞り込んでいけば、銘柄選びでそれほど時間がかかることもないでしょう。

しかし、残念ながらETFを毎月定額で買い付けるシステムは「つみたてNISA」しかありません。2021年6月現在、つみたてNISAで利用できるETFは、国内株式型3本、米国株式型1本、世界株式型1本、海外先進国株式型1本、海外新興国株式型1本の7本だけです。もしも、これ以外で分散して買おうとすると、つみたてNISAではなく一般のNISAを使い、自分で月末に買う、といったルールを作って、定期的に買い付けする必要があるでしょう。そうであれば、個人型確定拠出年金(iDeCo)などを使い、株価指数連動型のインデックスファンドを優先して利用するのがベターです。

個別の銘柄で利益を出そうと思うから、投資を始めるのに躊躇してしまいます。しかし、長期スタンスで投資をしようと思えば、10年、20年後に結果を出せるような投資方法はあるのです。

30代、40代なら、今からでも遅いということは、まったくありません。長期スタンスで投資を始めるのは、いつでもできることです。

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