W杯の前哨戦で不安を露呈
W杯を前に苦戦が続いているなでしこジャパン・
しかし、その後は結果を残せていない。
昨年秋のアジア大会では、決勝で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に1対3で敗れ、大会連覇を逃した。それでも、若手選手を数多く起用しての銀メダル獲得には、チームの底上げを促したとの見かたもあった。
関係者に危機感が広がったのは、今年3月の“アルガルベカップ”である。6月の女子W杯に出場する強豪が顔を揃えた大会で、デンマークに1対2、フランスに1対3で敗れてしまったのだ。格下のポルトガルには3対0で勝利したものの、過去最低の9位で大会を終えたのだった。
なでしこジャパンを下したフランスも、決勝でアメリカに0対2で敗れた。また、ノルウェーとの5位決定戦に進出したデンマークも、2対5で大敗している。自分たちを退けた2か国が、ワンランク上の相手に力負けをしてしまう──そうした事実も、女子W杯連覇の難しさを際立たせた。
チームの成熟と世代交代の狭間で
2011年の女子W杯から4年をかけて、佐々木則夫監督(56歳)は緩やかに世代交代をはかってきた。しかし、前回の優勝メンバーに頼らざるを得ないのが現実だ。前述のアルガルベカップでも、決定的な仕事をしたのはキャプテンのMF宮間あや(30歳)であり、MF川澄奈穂美(29歳)であり、FW大儀見優季(27歳)だ。DFラインにも近賀ゆかり(30歳)、岩清水梓(28歳)、熊谷紗希(24歳)、鮫島彩(27歳)と、世界女王に輝いたメンバーが並ぶ。4年前の女子W杯に出場していない次世代のプレーヤーで、自他ともに認めるレギュラーはひとりもいないのである。
選手たちの年齢を見ればわかるように、チームが極端に高齢化しているわけではない。女子W杯優勝をきっかけにドイツやフランスでプレーする選手が増え、主力クラスはほぼ漏れなく海外移籍を経験している。熊谷、大儀見、宇津木瑠美(26歳)、永里亜紗乃(26歳)、安藤梢(32歳)、岩渕真奈(22歳)らが、ヨーロッパのクラブに在籍している。個々の経験値は、4年前よりも高い。
チームとしての成熟度も増している。前回の女子W杯以前から培ってきたコンビネーションには、さらに磨きがかかっている。それぞれの得意なプレーは言うまでもなく、試合の流れのなかで誰がどんなプレーを意図するのかも、素早く察知できる関係が成り立つ。
対戦相手の心理を、推察してみる。
パワーとスピードが最大の武器とみなされてきた女子サッカーに、組織的なパスワークによる攻撃を持ち込んだなでしこジャパンのスタイルを、各国は敬意を持って見つめる。ただ、チームの顔ぶれがほとんど変わらないことで、対戦相手からすれば予測を立てやすい。自分たちの強みと弱みを細部にわたって研究されたなかで、なでしこジャパンは戦いに挑まなければならない。
なでしこジャパンの成熟度が、再び世界を席巻するのか。それとも、対戦相手の包囲網に屈してしまうのか──W杯連覇のポイントである。
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