ベストセラーのパターンに完璧にハマった
ひょっとするとカイエンを上回る大ヒット作になるかも…。弟分、ミッドサイズのクロスオーバーSUV マカンの評判がすこぶる良い。前評判と期待の高さが初期のセールスを支え、プロダクトの仕上がりの良さがさらなる評判を呼ぶという、ベストセラーのパターンに完璧にハマった。
人気の理由に検討のつかない、もしくは人気そのものに乗り遅れてしまった人は、こんな風にマカンを評する。「安いからね! どうせアウディかなんかと一緒なんでしょ?」。
「安いから」は当たっている。2L 4気筒ターボのマカンで639万円~というから、新車のポルシェで最も安い。2シーターのボクスター最廉価モデルより約50万円も安い。5ドアSUVで実用性も高い。そんなポルシェが売れないわけがない、という見立ては正しい。
「アウディかなんかと一緒」というのは、クルマに詳しい人が間違いがちなウンチクである。もうちょっと詳しい人でも、せいぜい、「アウディQ5のプラットフォームを使っているんでしょ?」、と、訳知り顔をするのが関の山だろう。で、間違っている。一緒では、決してない。
確かに、3割かそこら共通する設計はあるだろう。けれども、それらはほとんどパフォーマンスとは無関係なパートである。ポルシェらしい性能を要求するために、パワートレインやシャシーなど主要なコンポーネンツは、専用設計なのだ。ポルシェはあくまでも、ポルシェらしい走りを、できるだけ安価に提供できるよう、頑張っただけである。その思想は、スポーツカーをできるだけ安く提供したいと願った、フェルディナントの想いに通じる。
そう、ポルシェもまた、高級車では決してない。スポーツカーである。スポーツカーはある程度高くつく。だから、高級かどうかは後付けの理屈であって、目指したものじゃない。高機能なメルセデス・ベンツがいつしか高級車になったのと、それは同じ理屈だ。
マカンの魅力は、ポルシェの金看板を汚すこと無く、ちゃんとスポーツカーらしく走ってくれる点だ。もちろん、ボクスターのように、911のように走ると言ってるわけじゃない。人気のSUVカテゴリーにあって、飛び抜けて気持ちのいいドライバビリティがあって、その質感がポルシェらしいものだと言っている。たとえば、ボディとフロアのがっちりとした感覚や、エンジンフィールとダイレクトに結びつく加速フィール、ニンブルなのに食いつきのいい四肢のさばき、などである。